福島県教育センター所報ふくしま No.72(S60/1985.8) -002/038page
小・中・高教材
音楽科の学習指導計画を立案する際の一つの視点
−小・中・高における学習の連続の中で−教科教育部 五十嵐 康雄
1 はじめに
音楽科の指導計画を立案する際に,小・中・高等学校のさまざまな学習の展開を音楽学習全体の中で改めて見直してみることは.大切なことである。なぜなら,現在それぞれの学校・学年で作成されている指導計画の内容が,小・中・高各学年の各分野とどうかかわるのかを,広い視野から理解できることになるからである。
そのことにより,学習指導計画を立案する際の主題の指導目標と評価目標がより明確になり,併せて指導内容を精選する根拠が確実なものとなるであろう。2 小・中・高各学年の学習指導計画相互の関連
音楽科の目標は小・中・高とも共通する部分が多い。しかし,その目標を具現化するにあたっての主題の設定や学習指導の展開のし方は,小・中・高の各学年によって微妙に変わってこよう。
小学校低学年では,遊びの要素が多く,中学年では,表現が多様になるなど,児童生徒の心身の発達によって学習指導の展開のし方が変わるのであるが,また反面小・中・高一貫して重視しなければならない部分も当然あるわけである。
そこで,音楽の各要素が学年の進行に従いどのように発展していくのか,加えてそれらの音楽要素を支える児童生徒の心身の発達その他がどのように関与してくるのかを表にまとめてみた。表1の上段では,リズム,メロディー,ハーモニーに大きく区分し,低学年の基本要素に心身の発達に伴って加味できる要素を左から右へ加えてみた。また,基本要素に相互にかかわってくる要素を矢印で示した。下段には,児童生徒の発育その他を次の項目に分けて表にまとめてみた。
○ 身体の発育
○ し好にかかわる面
○ 地域での表現活動
○ グループ活動
○ 他教科との関連3 学習指導計画を立案する際の一つの視点
ここでは,表1を参照しながら小学校5年の指導計画を立案する場合の配慮について,いくつかの項目にしぼって考察してみることにした。
○ リズム
リズム学習は低学年に比重がかかっているのであるが,5年のリズム指導に際しては,身体の発育の実態から,筋肉の発達と小脳の機能と関連して筋肉の記憶保持能力が発達する年齢に達しているので,このことを配慮した指導計画が望まれる。
身体表現などとも関連させながら学習できるような配慮や楽曲の中から共通リズムパターンを発見させたり,重要なリズムパターンは,個別指導も含めてクラスの大部分の児童がマスターできるまで学習が積み上げたりするような配慮が必要であろう。このことの成功は,筋肉の記憶保持という。点から,その後の学年におけるリズム学習へ大きな影響を与えることになるのである。
このとき注意しなければならないのは,器楽でそのリズムがマスターできたとしてもそのことが直ちに歌の場合にあてはまるとはいえないことである。つまり,声帯回りの筋肉を使用しない楽器(鍵盤楽器など)は,筋肉の面での関連があまりない点を考慮する必要がある。変声期を迎えようとしている時期でもあり,ついつい器楽の学習が多くなってしまい勝ちであるが歌唱についても将来を洞察した場合,とても大切な年齢であるので,音域などを考慮し,児童のよい面を引き出しながら,さまざまな手立てを工夫し,結果的に筋肉の記憶として定着するまで,根気よく指導するような計面が大切である。○ メロディー
メロディー作りでは,ともすると旋律の流れを感覚的にとらえようとする学習が多くなるが,ここでは,ことばのメロディー,特に日本語の持つ語感,日本語のことばのフレーズを中心に考察す