福島県教育センター所報ふくしま No.72(S60/1985.8) -010/038page

[検索] [目次] [PDF] [前] [次]

教育相談

反社会的行動を起こしやすい生徒が描く樹木画の全体印象

教育相談部  高石 寛治

1. はじめに

 生徒の不適応行動の要因が複雑・多様化しつつあるといわれている。そこで,その不適応行動の初期的徴候をできるだけ早期に発見して,生徒への指導援助に資することができるようにと考えた。具体的には,C.コッホの創案になるバウムテストを用いて,生徒の不適応行動の徴候が全体印象としてそこにどのような形で投影されるかをみようとした。そのため,できるだけ現場に即した樹木描出パターンの判定基準(表の1.(丸囲み数字)〜12.(丸囲み数字))を設定し,それと生徒が描く樹木画との関連を模索してきた。以下,その要約を述べることにする。

2. 方法

(1)対象
 当教育センター研究紀要No.62による「反社会的行動の種類と内容」を基準にして,反社会的行動を継続的に顕著に示す生徒(以下,不適応群)とそれとはぼ同数の特に適応良好な生徒(適応群)を選択した。調査人員は次の通りである。

調査協力校及び対象生徒 不適応群 適応群
県内A市立B中学校2年生 15(名) 25(名)
〃 C市立D中学校3年生
〃 E市立F中学校3年生
当教育相談部来談の中学生 7 0

(2)基準的評定項目
 項目は,C.コッホの「人格診断指標」を基にし,それに加えて,V.ローウェンフェルドの絵画指導における性格特性−立体的描画を表現する「明暗」,豊かさを生む「量感」生命力を得る「動勢」−及び,「バランス的要素」,精神的発達を示す「幹の処理」などから,現場で利用しやすい12のチェック項目に限定した。

3. 結果と考察

 両群について,各項目とも5段階評定〔ただし,3.(丸囲み数字),10.(丸囲み数字)は二者択一法(+1)(−1),5.(丸囲み数字)は三件法(+1)(0)(−1)による〕を行い,その結果に基づいて,平均値によるプロフィールを作成した。

        <表 5段階評定によるプロフィール>
表 5段階評定によるプロフィール

 以下,心理的な側面から,評価項目ごとに考察した結果,不適応群について特徴的な背景を次のように要約することができる。

1.(丸囲み数字) 樹木全体のバランス − 統計的に,有意な差が認められた。内面の不安定さや外的環境からくる自己定位の不確実感・


[検索] [目次] [PDF] [前] [次]

掲載情報の著作権は情報提供者及び福島県教育センターに帰属します。