福島県教育センター所報ふくしま No.72(S60/1985.8) -011/038page
緊張感が非常に高い。
2.(丸囲み数字) 樹木全体がのびのび描かれているかどうか−
項目1.(丸囲み数字)の場合と同様の解釈ができる。困惑感,緊張感が強く,抵抗力を欠き疲労しやすい。これらをうまくacting−Outする手段,社会的に容認された形での昇華の仕方を身につけさせていく必要があることを示唆している。
3.(丸囲み数字) 樹木画の中の付属物及び風景−
自己の置かれている現実を直視することを避けて,現実と隔絶したような忘我状態になり,印象に支配されて行動し,放蕩的・刹那的な行動をおこすサインと解することができる。
4.(丸囲み数字) 幹部のふくらみ・くぼみ・曲り−
わだかまり,流れが妨げられている状態(感情の蓄積・うつ積)が比較的顕著である。この点について特に注目したい。
5.(丸囲み数字) 幹の先端の処理−
自己ととりまく社会との間に,はっきりした関係が確立されていない。すなわち,今どう生きるか,あるいは自己と規範性とのかかわりを認識せず,そのため自分に責任を課すことができず,あらゆるものを先延ばしするパターンである。
6.(丸囲み数字) 樹木の豊かさ−
樹木の成熟度,豊かさが欠如している。それは,内面的な感情や情緒の豊かさ及び知的面の未成熟を表している。
7.(丸囲み数字) 自然に近い形での樹木の描出−
現実吟味の力に乏しく,自己と現実との関係の吟味の不十分さ,自己受容の能力の低さを意味している。
8.(丸囲み数字) 樹冠の描出のきめの細かさ−
両群に統計的に有意差が認められなかった。これは,中学生の段階では,どの子供にも共通して自己を周囲に表現する方法が拙悪だったり,まだ十分に制御されない形で表現されたりすることを示唆するものと解釈できる。
9.(丸囲み数字) 幹と枝がしっかりした形をしているかどうか−
自己と環境,自己と現実との間の境界の不確実性が診断され,対人関係の不安定さ,満たされない感情が顕著であることがうかがえる。
10.(丸囲み数字) 樹木が画面におさまっているかどうか−
樹木の描出が,画面におさまっているかいないかは,自己の置かれている現実や環境を受容できるかどうかに関連している。樹木のはみだしが不適応群に相当多くみうけられることは,欲求不満,耐性の低さや現実洞察の部分的な欠如を物語っている。
11.(丸囲み数字) 樹木描出のていねいさ−
傾向的には,項目9.(丸囲み数字),10.(丸囲み数字)などと類似的,相関的な様相を示唆しており,根気や耐性の有無などと関連があるように思われる。
12.(丸囲み数字) 幹の太さ−
両群に共通して太い幹で描出しているが,特に,不適応群に多い。幹の太さは,「自我の拡張・肥大〜収縮・萎縮」と関連がある。このことから理解できることは,自我意識や自我感情の過当な拡大や肥大が,ややもすると集団規準から逸脱した行動異常にいたらしめる側面があることを示喚している。以上,個々について解釈を試みたが,全体的にそれらをC.コッホの解釈仮説と照合してみた場合,「抑制,固執,爆発性,感情の蓄積,衝動的,散漫,陽気,軽率,移り気,持続性の欠如,神経質,不健康的,安定性の欠如」などが,不適応群のとりわけ顕著な性格的特性といえる。
4. おわりに
今回のバウムテストに表れた描出パターンと行動特性とは一応対応している。日常の指導援助の中で,表現としての行動と内面としての情緒的・性格的側面との関連の理解に努めつつ学習指導や生徒指導を行うことは重要な意義をもつと思う。
参考文献
- 「バウムテストの臨床的研究」 林・一谷著
- 「バウムテスト」 C.コッホ著
- 「美術による人間形成」 V.ローウェンフェルド著
- 京都教育大学紀要 No.55
- 福島県教育センター研究紀要 No.62