福島県教育センター所報ふくしま No.72(S60/1985.8) -013/038page

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3. 特別活動における生徒指導

 特別活動と生徒指導の関連をみると,生徒指導は,個々の生徒や生徒集団のあらゆる生活の場に即して,常にその自発性や自主性を尊重しながら展開されなければならない。また,特別活動の目標は,集団活動を通して自主的,実践的態度を育てるとなっている。
 この意味から特別活動におけるすべての指導は,生徒指導そのものであると解してもよいほど,この両者の関連は深いと言える。
 そして,生徒に様々な形態の集団生活を経験させる中で,教師と生徒の触れ合いも深まり,これが生徒理解の深化につながって,よりよい生徒指導を目指すことが可能になるのである。

● 生徒指導の主な機能と特別活動の展開
 生徒指導は領域としてとらえるのではなく,機能として働くものであることを改めて認識しなければならない。
 したがって,生徒指導の見地から教育的な意義を挙げるとすれば次のようなことが言えよう。
  1. 自分たちの集団を,自分たちの力によって規律正しく運営することを学ぶ。
  2. 集団を構成する個々の成員が,相手とのかかわりを考えて行動することを学ぶ。
  3. 集団としての連帯感を高め,集団の一員として,社会人としてのふさわしい態度や 行動の仕方を学ぶ。
 このような教育的な意義をもつ特別活動をどのように展開するかが最も大切なことである。
 学校行事を例とした場合,学校行事は学校が計画して実施する教育活動といっても,教師主体の計画によって,生徒を受け身の立場で参加させるということを意味するものではないと考えられる。
 むしろ,生徒の自発的な活動を助長し,その活動の余地をできるだけ広げていくことが,生徒の学校生活への所属感,活動を通しての満足感,更には存在感などを高めていくことになるのである。
 したがって,学校行事の指導において,計画実施,実施後のそれぞれの段階において,生徒をどのように活動させ,協力させるかなどを明らかにし,生徒の自主的,積極的な活動を促すことによって,「私たちのやる行事」へと変革をもたらすものと考えられる。
 生徒は,このような活動を通して個としての存在が周囲の人に認められ,また,集団の役割を分担し,それを果たしていくことによって,やり遂げたという成就感を体験するのである。
 更に,教科の授業では比較的目立たぬ存在であっても,種々の活動を体験させることによって,特別活動が生徒の内に秘めたすばらしい才能を発揮する場となったり,新たな発見の場ともなるのである。
 生徒にとって,このときこそ学校生活への魅力や楽しさというものを,体験を通して味わうことになるのではないだろうか。
 このような活動の場を,生徒指導の基本とする生徒理解ということから考えてみても,教師と生徒が一体となった活動の中での理解は,塾にはまったものではなく,どく自然な触れ合いからの理解が可能となり,個に応じた指導も一層進めやすくなるのである。

 これまで述べてきたように,特別活動における生徒指導の機能や利点を踏まえ,学校の特色を生かし,創意と工夫によって,それぞれの活動を充実し,学校生活への魅力をもたせることが,今後ますます望まれることではないだろうか。

4. おわりに

 生徒を取り巻く指導上の問題は多岐にわたっており,これら指導に日々努力しているところである。しかし,問題行動をもつ,もたないに関係なく,学校がおもしろくない,魅力がないという声を聞くのも事実である。
 このような声は一部の生徒の声であっても,学校としては軽視することのできないことである。
 魅力をもたせるといっても難しい問題ではあるが,学校生活の大部分を占める授業の充実と特別活動の改善充実を原点にかえって考えてみる必要はないだろうか。


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