福島県教育センター所報ふくしま No.72(S60/1985.8) -014/038page

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研修者の感想

小学校社会講座を受講して

いわき市立植田小学校教諭  猪狩 和雄

1. はじめに

 「わかる授業」をするには,一人一人のつまづきやその原因をつかみ,個に応じた指導の手だてを講じることが大切であり,その場合,評価の機能を生かすことが重要であると常々考えていました。しかし,評価をどう生かして授業実践に役立てるかということについては,もうひとつ明確でなく,悩んでおりました。
 そんな折,教育センターの小学校社会講座を受講し,頑の中のモヤモヤとしたものが晴れたような気持ちでいっぱいです。
 以下,特に印象に残った講義について,思いつくまま感想を述べさせていただきたいと思います。

2. 観点別到達度テスト問題の作り方

 私が,一番興味を持ち,期待していた講義です。いろいろな書物を読み,おおよそのことは知っていたつもりですが,前にも述べたとおり何かふっ切れないものがあったため,講義を聞いて,何かをつかもうと,一言も聞きもらすまいと真剣に受講しました。
 講義では,医者の仕事を例にして,患者を診断し,それに基づいて治療をするように,教師は一人一人の子どものつまづきを発見し,それぞれの子どもにあった指導をすることが大切であると教えてくださいました。また,形成的評価の機能をを明確にしたうえで,その一方策としての形成的テストの役割やテスト問題の作り方について,詳しく説明していただきました。
 講義のあとは,演習が行われました。研修者が,数名のグループを作り,一つの小単元の目標分析と,一つ一つの目標に対応するテスト問題を作成する作業でした。いざ演習に取り組んでみると,基礎的・基本的事項の洗い出しやら,問題の作成やら難しいものばかりで,ほんとうに悪戦苦闘の数時間でした。「あれも,これも」と欲を出して,結局は,しっかりとした教材の精選ができない自分が,とても恥ずかしいと思いました。
 しかし,指導の先生や同グループの人々に助けられ,どうやらテスト問題ができあがったときは,何か自分たちの作品に「命」さえ感じられ,苦労のかいがあったというのが実感でした。
 学校にもどって,さっそく社会科はもちろん,算数科などでも,この考え方をもとに実践してみましたが,子どものつまづきがはっきりとつかめること,治療の方向が明らかになることなどが実証されました。さらに,目標分析をしっかりするということは,単元の指導をどう展開するかについて,多くの示唆を与えてくれることも分かりました。

3. 読図・作図のしかた

 指導の先生は,5年生の「水島工業地区」の指導の例を引いて,具体的に説明してくださいました。
 特に,水島工業地区の広さをはっきりつかませるために,25,000分の1の土地利用図を使い,これと同縮尺の信夫山の地図とを比較させる指導など,「なるほどこれなら子どもが実感として広さをつかむことができるな」と感心いたしました。地図の利用というと,何かむずかしいことのように考え,とかく敬遠しがちだったのですが,「これなら私にもできる」と自信のようなものがわいてきて,今後の実践に意欲を持つことができました。

4. おわりに

 以上のほか,「生徒指導−相談的な教師−」や里野清一先生,秋山政一先生の講義など,どれもこれも参考になるものばかりでしたが,紙数の関係でここで感想を述べることはできません。
 いずれにしても,頭,手,足を使ったこの3泊4日は,ほんとうに充実した毎日であり,私たちのために苦労して準備してくださった教育センターの先生方に対して,感謝の気持ちでいっぱいです。今後は,この研修で得たものを生かし,子どもたちのためにいっそう努力をかたむける覚悟です。

 ありがとうございました。


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