福島県教育センター所報ふくしま No.72(S60/1985.8) -019/038page

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個人研究紹介

異性交遊にかかわる怠学生徒の指導事例(中学3年女子)

 現代の物質豊かで変化の激しい情報社会の中で精いっぱい生きようとしながら成長し続ける少年にとって,複雑な環境を正しく見つめ,適切に情報を処理し,行動力を身につけることは,非常に困難な時代となってきている。
 戦後の少年非行の傾向を見る時,最初のピークは経済的な背景を原因とし,第二のピークは政治的な背景を原因としたものであったと言われている。しかし,現在に続く第三のピークは「初発型から衝動型へ」と変質し,「人間性の欠落」が背景となっているかに見える。
 青少年健全育成会議をはじめとして,関係機関においては,青少年の健全育成を求めて健全育成のための行事や補導活動等が,根気よく続けられている。
 しかしながら,少年非行の傾向は「低年齢化,集団化,広域化,悪質化,多様化」している。特に,女子の非行増加は家庭環境を背景とするものがほとんどであり,深刻な社会問題となってきている。
 また,各方面において,生徒指導の対策研究が年々深められ「家庭・学校・地域社会の連携」の大切さが叫ばれ続けている。それにもかかわらず,少年非行のピークが続いているのは,どうしてなのだろうか。
 本事例は,このような課題を踏まえて,学校における生徒指導の見直しをするとともに,今後の生徒指導のあり方を求めて,特に中学校の女子生徒の非行事例を取り上げたものである。

1 本事例の概要

 本事例におけるN子は,I中学校の3年生で無口な生徒であった。
 I中学校は,市街地に近い丘陵の上に建つ大規模校であり,附近に団地が多い。
 最近は,以前にこの土地を離れて行った人たちが母子連れでもどってきているが,家庭的に恵まれない例が多い。また,共働き家庭や留守家庭も増加し,学校全体の26%もいる。更に,母子・父子家庭が全体の9%,一人っ子が全体の7%で,全体的に見ると42%の家庭が生徒指導上何らかの課題を有していると思われる。
 N子の家庭も例外ではなかった。両親共働きで両親の帰宅は,ほとんど暗くなってからであった。
 ただ一人の姉は高校3年生で,帰宅がいつも遅かったので,家族4人の生活はバラバラな状態であった。
 昭和59年の12月になって,欠席していたN子にY高校を中退したK男(16才)が急激に近づいた。二人はすぐに親しくなった。N子の両親は,冬休みになるまで二人の関係に気づかなかった。
 N子の父が胃病のため入院したので,母が看病のため病院に泊った。N子は怠学しはじめた。
 事情を知った学級担任のK教諭の指導で,冬休みの前日まで登校したN子は,立ち直ったかに見えた。しかし,冬休み中に再び生活を乱したN子は1月になって欠席しはじめた。最初の理由は「かぜのため」であったが,途中からは「怠学」にかわった。しかし,12月の欠席の時と同じようにいつも欠席理由は「かぜのため」であった。
 1月の最初の欠席が「かぜのため」であることを確かめたT教諭は,その後の報告も信じた。しかしK男との関係を知って隠した母を強く指導した。
 2月17日に怠学の事実を知った学校側の積極的な対応によって,やっとの思いでN子の生活を正常な姿にもどすことができた。
 問題解決への条件は,広くかつ深いものであったが,生徒指導の見直しの観点に立って,異性交遊の怠学生徒を指導した事例である。


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