福島県教育センター所報ふくしま No.72(S60/1985.8) -020/038page

[検索] [目次] [PDF] [前] [次]

2 問題行動の状況とその背景

(1) 家庭環境
構成 職業等 生活の状況 N子への関心
父 親 会社員 12月に入院 放任状態
母 親 会社員 通勤と看護 甘い態度
実 姉 高校3年 交際で多忙 無関心状態
N 子
(本人)
中学3年 離れの部屋に一人で起居し淋しがる。K男に会い怠学

 父は,入院するまで毎夜遅く帰宅した。母は6時過ぎに帰宅し,姉と一緒に別の部屋にいた。
 父が入院してからの母は,病院に泊ることも多く,姉も遅かったので,N子は一人だけの自由な生活ができた。反面愛情を感じない冷たい日常生活の中で,K男のつけ入るすきが生じた。

(2) 地域の環境
 N子の家の近くだけではないが,酒類・タバコ等の自販機が夜中も自由に開放されており,少年にとっては健全な道をめざしながらも心にすきまが生じ易く,障害の多い環境である。
 また,N子の夜間外出の事実を知ったK教諭がN子の家を訪問した時,たまたまN子が帰宅するところへ出会った。その時隣人たちは逃げ回るN子と追いかける教師を横目で見つめていた。つまり,人間関係ができていなかったのである。

(3) 本人の状況
        (N子の学習成績)
教科
学年
項目
保体 技家
学年別評定 1 年 1 1 1 1 1 2 2 2 2
2 年 2 1 1 1 2 1 2 2 2
3 年 1 1 1 1 1 1 1 1 1
知 能 1 年 教研式知能検査SS(31)

 学力が下位にあるN子にとって,4教科は,楽しさを味わえる雰囲気であった。しかし,2年の2学期は,生活の変化や進路への心配もあって,成績に多少の変化が見られた。3年になってからは,N子の心身の発達,家庭の環境,交友関係の失敗から,成績は最低であった。
 学習への意欲をなくしたN子は,交遊関係を何よりも大切にした。自分の将来への不安や淋しさから,愛情を求めながらも大人への不信感がN子の生活を乱していた。

(4) 友人関係
        (昭和60年1月)
友人 関係 問  題  傾  向
S子 親 友 非行歴有す。N子の面倒みる。
4人 仲 間 仲間意識を持ち,ついて歩く。
K男 交遊者 高1中退,無職,N子と交際

 S子は,2年の1学期に転校してきたが,親分肌で体格もよく,喫煙常習者であった。N子を可愛がり,相談相手となってリードした。
 N子の生活は,S子によって崩れはじめ,S子が進路の心配から立ち直ってもN子は一人で突っ走る結果となった。4人の女友達は非行に走ることもなく,ただついて歩くグループであった。孤立したN子は,ますますK男との関係を深めることになり,K男も自制心を失っていた。

3 指導の概要

(1) 指導

  1. 生徒指導の体制
     生徒指導委員会において,生徒指導上の問題の対策を協議する。その協議に際し,上司の指導助言を得て実践指導のための指導方針を確立する。確立された指導方針は,校内における組織を通して実践された。
     特に,家庭との連携については学級担任を中心として,問題の性質によっては学年の係が援助する。それでも困難な場合は,生徒指導主事が学級担任・係・学年主任等の要請に応じて,直接に指導活動を行う。
     生徒指導主事は,上司の指導助言を十分に生かしながら,特に家庭訪問や教育相談においては,関係者との連携に留意する。
  2. 指導方針
    ア 全職員の共通理解と連携の強化
    • N子に関する情報の即時交換と協力
    イ 指導上の留意事項の徹底
    • N子の学級担任を援助する。(進路指導で多忙な時期である。)
    • N子の友人への働きかけを強める。(N子が大切にされている心情を伝える。)
    • N子とK男の家庭を訪問し,現在の二


[検索] [目次] [PDF] [前] [次]

掲載情報の著作権は情報提供者及び福島県教育センターに帰属します。