福島県教育センター所報ふくしま No.72(S60/1985.8) -024/038page

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アイディア紹介

一人一人の耳と心で

二本松市立二本松第一中学校教諭  菅原 久美子

1. はじめに

 中学校音楽科の目標は,学習指導要領によると「表現及び鑑賞の能力を伸ばし,音楽性を高めるとともに,音楽を愛好する心情を育て,豊かな情操を養う。」とうたわれている。
 指導をふりかえると,生徒はかなり意欲的に取り組んでいたが,技能を伸ばすことに指導の重点を置いてきた感じがあり,生徒の音楽を愛好する心情の育成については,何か寂しい思いが残っている。まして,楽譜が思うように読めない,声が悪い,あるいは音程が正しくとれない生徒にとって,音楽は,嫌いなものになっていたのではないかと反省させられる。
 そもそも音楽は,音楽そのものの持つ美しさ,神秘性が,人々の心に感動や安らぎをもたらすものでなければならない。
 そのため,一人一人に感動を味わわせ,音楽を好む生徒を育てるため,最近試みている実践の一端を述べてみたい。

2. 実践

(1)分離唱の導入
 分離唱の方法をとれば,たとえ楽譜が読めない生徒でも,また音痴や声の悪い人でも, 耳がひらき ,たちまち合唱の仲間に入ることが出来るようになる。その面で実績をあげられた佐々木基之氏の教えをうけながら,分離唱を導入してみた。

  1. 耳をひらく
     ピアノの響きを騰きながら,その和音の中の1音を歌う訓練を重ねていくと,合わせようと思わなくとも, 耳が働き出す ので,自分の声がピタリとその和音に溶け込んで消えていってしまうような状態になる。このようなハーモニーの極致に達する状態になることを 耳をひらく と提唱されている。
  2. 分離唱の方法
    ア 分離唱の基本
    • ピアノで C E G を弾き,直後に「E(エ−)」と言って生徒にE音を歌わせる。慣れるまでは教師が範唱し,その声を模倣させ,しだいに正しいE音が歌えたら,和音を連続して弾き「ピアノを聴いて,聴いて」と言い,和音をよく聴く態度を養うことが大切である。
      分離唱の方法
    • 初めての分離唱は,C E G のE音から行い,G,Cはいずれを先に行ってもよく,慣れてきたら順序を崩す。
    • 次に,C F A と H D G の和音でやる。 この主要三和音によって音階の音が全部出揃う。
    • 次に副三和音に入り,これができるようになったら,黒鍵音を含んだあらゆる和音による分離唱に入って,速度も次第に速くしていく。
    • ドイツ音名なら半音も歌うことができるようになる。
    イ 和音三声唱
    • 1つの和音を組成している3個の音を3人(または3組)で同時に歌い,聴き合うことによって,美しいハーモニーが生まれる。
    ウ 三声唱一巡
    • 生徒全員を3組に分け,各組とも三声唱の各パートを1回ずつ受け持つように,次々にパートの分担を変えて三声唱をする。


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