福島県教育センター所報ふくしま No.73(S60/1985.10) -003/038page

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り明確にしようとするにある。さらには,数ある類義語の中で,あえてその語が選び用いられている理由をも考え,その表現効果にまでせまろうとするものである。ついては,類義語間の意味の重なりやずれ,すなわち.「類義語の相」を表に示せば,次のとおりである。
1 意味の方面
ア ほとんど重なり合う関係
来年/明年 投手/ピッチャー くさる/腐敗する
イ ー方が他方を包摂する関係
時間/時刻 木/木材/樹木 うまい/おいしい
ウ 両方の語がそれぞれ一部分において重なり合う関係
ごみ/ほこり つな/ひも きれいだ/美しい
エ 隣接的関係
貯金/預金 注意報/警報 軽震/弱震/微震
2 語感の方面
ア 新旧の感じ
映画/活動写真 駅/停車場 スピーカー/拡声器
イ 改まった感じ
決める/定める まかせる/ゆだねる 手紙/書簡
ウ 優雅な感じ
どこ/いずこ 歩く/あゆむ 集まり/つどい
エ 丁寧な感じ
めし/ごはん くう/たべる もらう/いただく
オ いやしめる感じ,差別する感じ
子供/がき 盲人/めくら 発展途上国/後進国
カ 忌みきらう感じ
便所/はばかり/手洗い/洗面所/トイレ
(「『類義語の研究』・国立国語研究所・秀英出版」による)


3 「基礎語の指導」の実際
 「基礎語の指導」の具体的例として,次に「動かす」と「のぼる」の二例をとりあげてみた。
(1)「動かす」の場合
 デュナンの熱意は,皇帝を 動かした 。間もなく,ナポレオン三世は,かれの提案をとり入れ,オーストリアの医師を無条件でしゃく放した。(「赤十字の父−アンリー=デュナン」光村・小5・上)


T 「動かした」とありますが,だれがだれを「動かした」のですか。
Cl「デュナン」が,「皇帝」をです。
T 「皇帝」とはだれのことですか。
C2「ナポレオン三世」です。
T では,「動かした」とは,デュナンがナポレオン三世をどうしたのでしよう。まず,「動かす」の意味を辞書で調べてみましょう。
(児童は,辞書で「動かす」の意味を調べる。)
T みんな.調べましたか。それではどんな意味か発表してください。
C3「物をある場所に移すこと」です。
C4「揺れさせること」です。
C5「機械や道具を動かすこと」です。
C6「人の気持ちを変えること」です。
C7「人を自分の考えのように行動させること」です。
T やあ,一つの言葉でもいろんな意味があるんだね。では,文章の流れや辞書の例から,ここの「動かす」は,その中のどんな意味がよいか,グループごとに話し合ってみよう。
(指示にしたがって,児童は話し合いを行う。)
T さあ,分ったかな。分ったら発表してください。
C8 「人の心を動かす」ということで,「人の気持ちや考えを変えること」です。
T ほう,なかなかいい意見だな。ほかにありませんか。
C9 デュナンは皇帝の気持ちや考えを変えさせただけでなく,自分の思いどおりに皇帝を行動させているので,「人を自分の考えのように行動させる」だと思います。
T なるほど。ではどんな行動をさせたのかな。
ClO「かれの提案をとり入れ,オーストリアの医師を無条件しゃく放した」のです。
T はい。大変よいと思います。このように一つの言葉でいくつもの意味をもっている言葉を「多義語」といいます。文章の中に多義語が出てきたら,その文章では,いくつもある意味のどの意味でその言葉が使われているのか考えなくちゃあいけないんだね。また辞書をひくときも,ただむやみにひくのでなく,いくつかある意味の中で,自分の調べたいと思っている言葉の意味はどれなのかを,きちんと読み分けることが大切なんだ。

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