福島県教育センター所報ふくしま No.73(S60/1985.10) -005/038page
高校教材 NCテープ自動作成システムを活用した基礎教育としてのCADへのアプローチ
−ラックによる歯形創成シミュレーションから−科学技術教育部 秋葉 史裕
1.はじめに
最近の急速なME(Micro Electronics)技術の進展により,産業界における生産システムは従来の高速・大量生産方式から多品種中少量生産方式を可能にする,フレキシブルで高度な自動化へと移行している。これを実現するための構成機能は業界によって多少異なるが,中でもCAD/CAM は避けて通れない技術として次第に定着しつつあり,これに関する基礎的教育のための研究は大変重要なものとなっている。
ここでいうCADとは,Computer Aided Design(コンピュータ援用設計)の略称で,全体あるいは個々の設計業務の合理化をコンピュータの助けを借りて進めていく考えであり,CAMとは,ComputerAided Mamufacturing(コンピュータ援用生産)の略称で,生産プロセスをコンピュータを用いてコントロールしようとするものである。つまり,CADは製品の製作工程のソフトの前半(形状を記述)を受け持ち,CAMはソフトの後半(動きを記述)を受け持っている。
今般,これらCAD/CAMに関する基礎的知識や概念を少しでも理解させるため,既存のディスプレイ付卓上形NCテープ自動作成装置(P−D)を中心とするシステムの,CAD的活用をとりあげてみた。
2 P−Dを中心とするシステムのCAD的活用
(1)P−Dを中心とするシステムの構成
今回使用したFANUC SYSTEM P−MODEL D はグラフィックディスプレイを内蔵した卓上形NCテープ自動作成装置で,コンピュータの利用技術によってNCテープを作成するものである。また,その周辺には,FAPT言語によるNC(Numerical Control)の自動プログラミングのためのソフトウェア群が配備されている。
パートプログラム原稿に基づくデータのキーボードからの入力は,この装置によって直ちにコード化され,NCテープとなって出力される。このNCテープは後段の自動製図機やNC工作機械の動きを指令し,制御する。一方,内蔵されているグラフィックディスプレイには対話的に装置の操作方法やプログラミングの編集方法がメニューとして表示され,プログラムの内容も描画として画面表示されるようになっているから,画面をみながらのプログラムの発展的修正が可能である。図1,図2に使用システムの構成を示す。
図1 ソフトウェア構成
FAPT EDITOR
マニュアルテープ作成と編集・修正 →
FANUC SYSTEM P−MODEL D
← FAPT POST
各種のファナックNC用ポストプロセッサ FAPT TRACER
NCテープ描画と加工時間計算 → ← FAPT TEACHER
FAPT独習用教材 FAPT MILL
2と1/2次元フライス加工と穴あけ用 NC自動プログラミング
→ ← FAPT DOCTOR
万が一の故障診断と機能確認
図2 ハードウェア構成
(2)システムのCAD的活用
通常,新製品開発のためのプロトタイプ(試作モデル)による比較検討作業には多くの労力と作業時間が費やされるのが常識であり,従って,多様なニーズに応えるためには,検討段階における時間の短縮化や労力および投資の低滅のための何等からの対策が大変重要となってくる。