福島県教育センター所報ふくしま No.73(S60/1985.10) -008/038page

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教育工学

授業における教育機器の活用

経営研究部  植田  守


1 はじめに
 すべての教師は,「良い授業をしたい」,「担任している児童生徒の全員に指導内容を理解させたい」と願っている。
 また,どの児童生徒も.「わかりたい」,「できるようになりたい」という願いを持って授業に臨んでいる。しかし,現実には,これらの願いどおりにならないという声も聞かれる。
 「わかる授業」を目指すためには,学習指導の質的改善がはかられなければならない。すなわち,学習過程におけるメカニズムを明確にし,教師の指導法に改善を加え,児童生徒の主体性を高めることが求められている。
 そこで,教師の指導機能の拡大と児童生徒の理解力の増大に大きな役割を果たす教育機器と学習のメカニズムとの関係について述べてみたい。

2 教育機器活用の現状
 下の表は.昭和60年度の当教育センター教育工学講座を受講した小・中学校69名の先生方への「教育機器使用上の困難点」についての調査結果である。
 教育機器使用上の困難点

順位

理      由

人数

1位

機器に対する知識・技術の不足 46人

2位

教材作成のための時間不足 45人

3位

機器の不足 25人

4位

機器の老朽化 17人
(困難点 自由記述)

 この調査結果と当教育センター紀要54号「OHP活用の現状と課題解決の手だて(小・中学校)」に掲載する表7・表13の調査結果を対比して考察すると,次のようなことが言える。
○ 機器に対する知識・技術不足から,多種多様な教育機器があるにもかかわらず,操作が比較的簡単な0HPやテープレコーダー・テレビが多用される傾向がある。
○ 教材作成のための時間不足から,多くの教育機器があるにもかかわらず,自作が比較的容易であるOHPやテープレコーダーに集中しやすい。
  また,市販教材を求める傾向も見られる。

 このような積極的な教育機器の活用,ならびに自作教材の作成は望ましい傾向と言える。しかし,反面,ややもすると学習指導のメカニズムを考慮しないまま授業が展開されている傾向も見られる。

3 学習のメカニズム
 次に,教育機器活用の基盤となっている学習指導過程を考えてみたい。
 本来であれば,児童生徒が自力で学習の対象を見つけ,問題を設定し,それを解決し,結果を評価することが望ましいことであるが,現実的には無理である。
 そこで,児童生徒の学習活動が円滑に行われるように,教師が援助・指導の手をさしのべることになる。教師は,児童生徒の実態に適した教材を準備し,目標を設定するとともに,児童生徒が学習活動を行いやすいように十分吟味されたプログラムを組み,それに基づき援助・指導を行い,学習結果についての評価を児童生徒に明確にかえしてやらなければならない。
 このように,児童生徒の学習過程と,それを助ける教師の教授過程が統合されたものが教授学習過程であると考えられる。
 坂本昂氏は,教授学習過程を次の八つのステップに分けている。

 教授学習過程のモデル (坂本昂氏)
教授学習過程のモデル (坂本昂氏)

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