福島県教育センター所報ふくしま No.73(S60/1985.10) -009/038page

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 以上のような八つのステップのくりかえしの中で,次の過程が特に大切な核となる。
 それは,情報がまる1まる2まる3と教師から児童生徒に「行き」,まる4の情報処理のあとまる5まる6まる7と児童生徒から教師に「帰り」,教師の情報処理まる1や働きかけをへて.まる8まる3と情報が児童生徒に「また行く」という流れである。
 授業における情報の伝達は,一方向に流れるだけでは不十分であり,双方向でなければならないことが指摘されている。それは,教師対児童生徒間のみでなく,児童生徒相互においても強調されなければならないものである。
 この情報の伝達・処理において,教師の機能を拡大したり,児童生徒の理解力の増大に重要な役割を果たすのが教育機器である。

4 授業における教育機器の役割
(1)提示機能増大の役割
  提示機能をもつ機器としては,OHP,VTR,16(8)ミリ映写機,スライド映写機,テープレコーダーなどがある。その役割は,次のようなものである。
 ○ 言語で提示されるよりも映像で提示された場合は,具体的・具象的であるので遅進児にも理解しやすい。
 ○ 図示したり,動きを伴って現実の姿を再現することがより可能になるため,印象が強まり,興味・関心が高まる。
 ○ 児童生徒から教師への反応や児童生徒同士の情報の伝達を明瞭に行うことができるので,個人思考や集団思考が具体的で確かなものとなる。
(2)反応診断機能拡大の役割
  反応診断機能をもつ機器としては,反応分析装置などがある。役割としては,次のような点があげられる。
 ○ 外部からは,直接観察できない内的な反応を,かなり明らかにすることができる。
 ○ 挙手などの場合,他の児童生徒の影響を受けやすいが,反応分析装置を利用すれば反応の独立性を保つことができる。
 ○ 児童生徒の反応を即時につかむことができるので,理解度を把握し,それに基づき授業をコントロールすることができる。

5 教育機器活用上の留意点
 同じ教材・教育機器を用いても,ねらい・児童生徒の実態によっても効果が変わる。教育機器使用の効果は,指導計画への位置づけ・機器操作の習熟度・ソフトウェアの質・用い方に左右されると言われている。使用上の留意点をあげてみたい。
(1)授業に関する要因を明らかにし,これらを最適に組み合わせて教育効果を高める授業のシステム化を考える。授業を「計画→授業実践→評価・反省→次の授業計画」という一連の流れをシステムとしてとらえ直す。
  このように授業をシステム化したものを,図式化して点検・評価すれば,授業展開の阻害要因となるものの発見,排除にも結びつく。
  教育機器は,それぞれ効果的であるが長所と限界の両面を持っている。それをどの場面にもあてはめるのは,逆効果をもたらす場合もある。使用過多も同様である。したがって,教育機器の使用を.授業のシステムの要因の一つとしてとらえ直す視点を常に持ちたい。
(2)現有機器の活用促進をはかりたい。さらに,教材開発の時間不足を補うためにも,学校にある市販のソフトウェアを一層活用したい。
(3)理解や思考をより確かなものにするため,教師のみでなく.児童生徒にも使用させたい。
(4)教育機器を活用する教材の開発やソフトウェアの自作に積極的に取り組むようにしたい。
  その結果,教材研究の深まりも見られるようになり,また,教育機器の活用能力も高まると思われる。

6 おわりに
 以上述でたように,学習のメカニズムと教育機器の関連を考慮した授業の展開がされれば,教師・児童生徒の「わからせたい」,「わかりたい」という願いに少しでも近づくことができるのではないかと思う。

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