福島県教育センター所報ふくしま No.73(S60/1985.10) -011/038page
積極的に観察する役割の観客が必要となる。
4 事例
学級担任との信頼関係を持てるようになった中学生。
<問題の概要>
中学3年の男子生徒,頭髪や服装が乱れている。学習意欲が低い。何かにつけ学級担任(女性)に反抗し暴言をはく。
<指導経過>
学校場面では,まず学級担任との信頼関係を築くことが第一と考えられる。そこで学級担任の考えや心情を考えてみることを目的としてロール・プレイングを実施した。
A:本人(学級担任の役)
B:カウンセラー(本人の役)
○ 場面…朝,廊下
A「おはよう」(やさしく)
B「………」
A「おはよ,おはよ」(軽やかに)
B「…‥‥‥…」(通り過ぎようとする)
A「おはようといっているのにどうしたの?」
(肩をつかみ,少し強い語調で)
B「いいたくねえから,いわねんだよ!!」(反抗的に)
A「おはようといったら返事をするものよ」
(強い語調で)
B「うるせえな,このヤロー!!」
A「あなたのことなどかまわないから!!」
○ 場面2・・・・・昼休み,教室
A「B,こっちに来てみな」(親しみをこめて)
B「…‥‥‥…」(そしらぬ顔をして)
A「B,B,B,こっち来いよ」(無邪気に)
B「‥…………」(にらみつける)
A「何よ,そんな顔して!!」
B「なんで,おれだけ呼ばれんだよ!!」
A「進路のこと聞こうと思ってたんじゃない…」
B「ほっといてくれよ」
A「そうはいかないはよ!!」
○ 場面・・・・・・・学級担任の授業中,教室
A「次,B君,読んで」(明るく)
B「…………」
A「B君,どうしたの」(心配そうに)
B「どうもしねえよ」(だるそうに)
A「じゃ読んでみなさい」
B「読みたくねえよ」(投げやりに)
A「あなたはいつもそうね」(あきれ顔で)
場面1〜3のような内容のロール・プレイングを数セッション実施した。
○ ロール・プレイング終了後の話し合い
学級担任の役を演じた本人は
「声をかけたのに返事をされなかった時はイライラした。先生もそうかもしれない」
「やさしく声をかけている時は相手をにくらしいなどとは思っていない。先生も自分をにくんでいないようだ」
「先生になってみると,本当に自分のことを心配してくれているのがわかった」
「自分は,何か先生に甘えているのかも知れないな」
など,学級担任が自分を思ってくれていることを述べ,自分の言動を反省し始めた。
その後,学校生活において,本人は学級担任と自然な形の会話ができるようになり,自分から進路について相談に行くようになった。また素直な態度をとるようになり,指導に従うようになってきた。さらに,成績も向上してきた。
これもロール・プレイングにより学級担任の心情を理解し,さらに自分を見つめることができるようになったことが大きな要因と考えられる。
おわりに
ロール・プレイングは人間関係における感情を体験的に理解できるところが一つの大きな特徴である。そのため,問題行動の改善の場だけでなく授業や特活などの場で活用できると考えられる。