福島県教育センター所報ふくしま No.73(S60/1985.10) -013/038page

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 動など。
○いじめ方(精神的・身体的苦痛,その他)
 仲間外れ,無視,言葉によるおどし,いやがらせ,暴力(なぐる,ける,こづく,ころばす)冷やかし,からかい,持ち物を隠す・汚す,落書,便所への封じ込め,金品・盗みの強要など。
○いじめの標的にされやすい子の特徴(平均的でない,他と同様でなく違和感がある場合など)
 悪口をいう,気が弱い,おとなしい,お人好し,鈍感,不器用,不潔,容姿がよい,成績がよい,転校生,ちちれ毛,肥満,背が低い,病弱,体臭,知恵遅れ,言葉,親の経済的貧困・社会的地位の低さ・悪評など。

3 いじめの心理的背景
 いじめの背景には学校での指導,家庭のしつけや教育機能の低下,助け合いより競争や選別が激しい社会的風潮など様々な要因が複雑に絡み合っている状況がある。
 岡山大学の木原孝博教授は,いじめの心理的背景を欲求不満・攻撃理論から説明しているが,ここでは,その要旨のみを紹介しようと思う。
 欲求不満が累積すると精神的緊張が増大し,その緊張から解放されるための行為として欲求不満の原因である対象への攻撃行動が現われる。
 人の欲求には,生理的欲求をはじめ,安全への欲求,社会的欲求,自尊欲求,自己実現の欲求などがある。児童生徒のいじめとかかわりの深い自尊欲求の満足が阻害され,欲求不満が累積すると精神的な緊張が高まる。その緊張から解放されるための行為として,児童生徒は教師からの関与を求め,注目される行動をとる。この段階で教師が児童生徒を受容し,自尊欲求を満足させてやると緊張は解消する。しかし,受容されず自尊欲求が満たされないと,更に目立つ行動が多くなり,攻撃欲求にエスカレートする。その結果,教師に対する暴力などの攻撃行動が現われてくる。ところが,暴力対策が強化され,教師に対する暴力は振えないので,攻撃欲求が仲間に対する支配欲求に移行し,いじめとなって現われる。従って,いじめは自尊欲求を満足させるための代賞行為といえる。

4 いじめへの対応
 いじめの克服や根絶には,何よりも早期発見と早期対応が決め手になる。早期発見のためには,例えば次のような徴候が手がかりとなろう。
 一人だけ皆から離れて沈んでいる,遅刻や早退,欠席が多くなる,入室が遅い,理由もなく保健室や職員室に出入りする,机やいすが壊わされたり落書きされる,ヤジ,冷やかし,からかい・あざけりなどを受ける,悪いことがあると,責任をなすりつけられるなど。
 さて,いじめの根絶には,担任教師が単に関係のある児童生徒の問題として対処するだけではなく,学級更には学年や学校全体に及ぶ組織的な取り組みが必要である。特に大切なことは,学級全員でいじめを無くす話し合いを繰り返し,決めた内容の実践を通して集団的に解決することである。
 いじめを根絶した事例の経過の要点だけを次に記そう。1.関係した児童生徒の家庭状況・交友関係・問題行動の洗い出し 2.各自の言い分の聴取・調査と事実関係の把握 3.いじめ調査による学級の状況把握 4.学年会への報告,今後の方針・学級での話し合いのもち方・学年全体でのまとめ方・時期などの検討 5.学級役員会での話し合い6.グループや学級会への提案・話し会い・まとめ・発表 7.発表内容の学級役員会での話し合い。
 以下このサイクルを繰り返し,最後に学級の取り決めをして実践に移す。これと同様の手順で学年の取り決め,学校全体の取り決めに高めていく。
 以上の組織的な取り組みの外,関係した児童生徒への個別的対応や保護者との連携も大切である。
 なお,全教師の対応としては,いじめは人権を侵害するもので,決して許されない行為であることを十分指導するとともに,学級に望ましい人間関係を築き,児童生徒が存在感や充実感のあふれる楽しく生き生きした学校生活を送れるよう学級の質を高めることが求められる。

5 おわりに
 いじめは,児童生徒の心を深く傷つけ苦悩と悲しみを与える。仮りにも教師の不用意な言動が,いじめの動機にならないよう深い配慮が望まれる。

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