福島県教育センター所報ふくしま No.74(S60/1985.12) -005/038page
中学教材
カンテン培地を用いた土中微生物の培養とデンプンの分解実験
科学技術教育部 高野 忠夫
1. はじめに
環境汚染や森林破壊が社会問題になっている今日,自然環境を維持するために重要な役割を担っているものの一つに,分解者と呼ばれる微生物があり,これが自然界の物質循環の中で重要な分解の役割を担っている。また,汚染物質をも分解してくれるなど微生物について考えてみなければならない数多くの問題がある。
そのため,中学校理科においても小単元としてとりあげられており,環境問題も含めて,分解者の役割を十分に理解させることが必要である。
分解者に関する実験には種々の方法があるが微生物そのものを肉眼で観察することは困難である。
しかし,カンテン培地により培養し,1個体より分裂した円状のコロニーは肉眼で観察できる。
また,このカンテン培地にデンプンを混入することによって分解の様子を簡単に調べられる。このような,カンテン培地を用いた土中微生物の培養実験は分解者についての理解に効果的であると思われるのでその概要について述べることにする。2.実験の方法
(1)実験材料及び器具(40人学級10班編成として)
粉末カンテン 12g 可溶性デンプン 2g 1,000mlビーカー 1ケ 500ml三角フラスコ 1ケ 100ml三角フラスコ 10ケ 直径5mmのガラス管(長さ10cmに切ったもの) 10本 直径3mmのガラス棒(長さ12cmに切ったもの) 10本 直径9cmのシャーレ 20組 ヨウ素液(小ビンに入れたもの) 10ケ 滅菌のための蒸し器(ふかしかん) 1ケ 滅菌水(一度沸騰させた水を冷やしたもの) 500ml 新聞紙 5枚 栓用わた(アルミホイールでもよい) 少々 ルーペ 10個 (2)実験のための準備
1,000mlのビーカーに400mlの水を入れこれに粉末カンテン12g(3%溶液)とデンプン2g(0.5%溶液)を入れ,かくはんしながら熱して溶かす。これを500mlの三角フラスコに入れ綿栓をする(アルミホイールをかぶせてもよい)。
シャーレを1個ずつ新聞紙で包む,このとき,上下が逆にならないように注意する。
直径5mmのガラス管の中に3mmのガラス棒を入れこれも新聞紙で1組ごとに包む。
100mlの三角フラスコの口には,アルミホイールをかぶせる。
上記のカンテン溶液,シャーレ,三角フラスコガラス管のセットを蒸し器に入れ,50分程蒸して滅菌する。滅菌したカンテン溶液は冷えてかたまらないうちに20個のシャーレに厚さ3mm程になるように流し込む。1個のシャーレに流し込む量は約20mlである。
流し込む作業は,シャーレを包んでおいた新聞紙を広げ,その上で行うと雑菌の浸入を少なくすることができる。
カンテン溶液を流し込んだシャーレは平らなところに置いて,カンテンを凝固させる。
ここまでの準備は前日に行うようにする。
各班ごとに次のものをパットなどに入れて準備しておくとよい。カンテン培地の入ったシャーレ 2個 滅菌水を50机g入れた三角フラスコ 1個 滅菌して新聞紙に包んだまゝのガラス管の