福島県教育センター所報ふくしま No.74(S60/1985.12) -006/038page
セット 1組 ルーペ 1ケ (3)生徒実験の過程
この実験は土を採取しその中に含まれる菌を移植するまでの過程と,菌が増殖して,コロニーを作ったものの観察及び,デンプンの分解の状態を調べる過程の二時限が必要である。
なお,移殖してから次のコロニーが観察できるようになるまでは22℃の温度で3日程の時間が必要である。すなわち,1時限において移殖し,次の観察のための2時限までの間に3日程の期日をあける必要がある。
- 第1時限の過程
- 室外に出て土を採取する作業
土の採取にはガラス管を用い,畑や校庭の表土を取り除き,その場所をガラス管でつつくと管内に土が入ってくる。
この土が7mm程度で約0.05cm 3 になる。
※ガラス管内の内径を3mmとすると,
0.15 2 ×π×0.7 ≒ 0.05- 滅菌水に入れてうすめる作業
滅菌水50mlの入った三角フラスコの中に室外で採取してきたガラス管内の土をガラス棒を用いて押し出し,フラスコを振ってかくはんする。
これによって土中に入っていた菌類は1,000倍にうすめられたことになる。
※ 50÷0.05 = 1,000
これは単位体積の土中に生存していた菌類の数を求めるためと,コロニーが適度にちらばって生じるようにするためである。- カンテン培地に移植する作業
土中の細菌をカンテン培地に移植するには,上記の滅菌水によりうすめた液を,シャーレのふたを少々あけて,約27ml程注ぎ込み,シャーレをかたむけて液がカンテン培地全面に広がるようにした後反転して,カンテン培地を上にする。
このようにすると余分の液は下のふたの方にくるので,カンテン面についた液の分に相当する菌が移植されたことになる。直径9cmのシャーレのカンテン培地の表面につく液の量は約0.2mlであるとすると,これに生じたコロニー数を5,000倍すると土1cm 3 中に生存していた菌数を求めることができることになる。
菌を移殖した培地は定温器に入れて,22℃で3日程培養する。室温で培養してもよいがその時は清潔で直射日光の当たらない場所に置く。- 第2時限の過程
- コロニーの観察
3日程おいた培地には多数の円形のコロニーを観察することができる。このコロニーはそれぞれ1個の胞子または菌体より生じたものであることを理解する。
シャーレの下に黒い紙を置くと観察しやすい。また,ルーペを用いてそれぞれのコロニーのちがいなどもくわしく観察する。- コロニーの数をかぞえる作業
サインペン等を用いてシャーレの底に印をつけて,コロニー数をかぞえる。
求めた数を5,000倍すると土1cm 3 中に生育していた菌数となる。- デンプン分解の状態を調べる。
シャーレのふたを取りカンテン培地上に,ヨウ素液を1ml程入れて培地上に広げると,ヨウ素デンプン反応により培地上が,青紫色となる。しかし,菌のコロニーが生じている部分は円形に色のつかない部分が現われる。
この部分が,菌のコロニーによりデンプンが分解され菌の生長のために利用されたことを理解する。上記のような実験法を考えてみたが,できればカンテン培地は各自1個ずつ用意できれば,生徒の興味・関心も高めることができると思われる。また,土の採取場所は,各班ごとに自由に選ばせ,