福島県教育センター所報ふくしま No.74(S60/1985.12) -009/038page

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 女子の場合A因子右寄り,Ag因子左寄りで,指導性はあるが,実行力に欠けている。一方男子は,情緒が安定し,社会的な適応力は認められるが,非活動的であることを示している。

4.不登校の生徒に対する指導援助

(1)H生徒 (中学3年女子)

  1.  家庭環境
     両親と祖父母,兄の6人家族。両親とも農業を営み,農閑期には,父親は季節労務者として働いている。経済的に恵まれているとはいえない。本人は幼児期祖母の世話を受け,両親との会話に恵まれないで育ってきた。両親の養育態度は厳格型であり,しかも子どもの養育について互いに不一致が見られる。
  2.  問題行動
     中2の冬休み以降,友人との争いを理由に断続的な不登校をくりかえし,中3の5月より連続して欠席するにいたる。身体症状としては,頭痛,目まいがあり,不眠を訴えていた。母親からの登校のすすめに拒否反応を示すなど高校入試をひかえ,本人,家族のあせりが見られた。
  3.  Y・G性格検査
       ・ E′型
    Y・G性格検査 E′型

     D,C,Coが右寄り,情緒不安定,やる気が少なく,気にしやすい。特に対人不安が強い,一方,G,A,Sはやや左寄り,引っ込み思案であり,行動も不活発である。
  4.  指導援助の方針
     性格検査から見て,やる気不足,対人不安引っ込み思案を改善することに指導援助の柱をおく。
    •  やる気を高めるため,両親,担任とも機会をとらえ,本人の行動を承認し,賞賛を与えるかかわりを多くする。
    •  対人不安,引っ込み思案を改善するため家庭内での両親との対話を多くし,お互いに本心を出し合えるようにする。
    •  担任は友人関係の改善の手助けをするとともに,本人の行動に積極的に承認を与えるようにする。
  5.  指導援助の経過
     初回の面接から12回の面接で終了。5回目の面接で,「両親が私の話すことを一緒になって考えてくれる。」など,本人から家庭での両親との関係の改善の様子が話される。その結果,本人は家庭での心の安定がはかられ再登校がはじまる。
     初回面接より4か月経過。担任の適切な援助が学習や行動の自信回復に結びつき,意欲的に学校生活を送るようになった。

5.おわりに

 不登校で来所した中学生50名について,再登校の様子を見ると,D類型,C類型,A類型の生徒の回復がよく,E類型,B類型は回復がおそい。
 また,5つの類型を通して,因子の飛びだしを標準点ごとに集約して見ると,D,C,N,及びCoの各因子が4の段階であるのが特徴的である。
 Ag,Aは2の段階,Gが1と2の段階である。このことから,不登板生徒の性格特徴としては,情緒不安定,社会不適応性が高く,非活動的,引っ込み思案であるといえる。
 不登校生徒に対しては,特に,D,C,N,CoとGの各因子に着目して指導援助をすることが重要である。
 このように性格検査の性格類型と標準点の飛びだしをとらえた診断は,不登校生徒の指導に有効と思われる。


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