福島県教育センター所報ふくしま No.74(S60/1985.12) -019/038page
ア.生活記録「しゃくなげ」の記録状況は,事前と比較して事後は良くなっている。これは表 1の調査項目 8の結果からも推測できるが,生活記録を提出させて,赤ペンによる話しかけを実践したことが一つの原因であると考えられる。記録のようす,言動や悩み等に対して,相談内容に答えたり,本人の考えや行動を認めたり,激励したり,また喜び合ったりの朱書きを徹底的に励行した。その結果が好結果を生んだものと解釈できる。
表 8は,抽出生徒からB男,生徒全体からC子を選び,6月,9月,11月の生活記録の記入状況の一様子をコピーしたものである。
イ.係活動については,創意の時間を中心にして,放課後等を使いながら活動を続けてきたが,中体連との関係で部活動の練習に参加することに力が注がれたりしたことなどもあって,自分から進んで活動をしようとする意識が学級全体では薄かったと考えられる。
ウ.対話については,生徒全体,抽出生徒共にプラスを示している。事前の観察では,話をすることがなかなかできなかった生徒が,授業中の手だてや,生活記録の赤ペンによる話しかけや,学年通信への意図的な掲載等の手だてを通して,気持ちが和み教師と話すことができるようになったと考えられる。
また,生活記録の中に,教師に対する質問や相談も数多くあり,それに直接赤ペンで答えたり,休み時間に廊下や教室等で話したりして回数がふえていった。
エ.学年通信には,賞賛と激励と期待感をこめて,作文や各種大会の入賞等を掲載する反面,生徒にイラストを募集し,学年通信に氏名が載らない生徒を優先にして,数名ずつ掲載し,個を認めていく方法を採った。
表 9は,12月はじめまでに,学年通信に掲載した回数である。イラストなどは,教師の方から催促しなくても,生徒が自ら応募し,常時,数十枚が確保されるまでになった。
(表 9)
学年通信には,全生徒の作品や氏名が載るように考慮した。特に,学習面や行動,性格面で指導援助を必要とする生徒には,一行感想文やイラスト面で掲載を考えた。現段階では,学年通信に1回も氏名が載らなかった生徒はいない。このことは,生徒たちに成就感や満足感を味合わせるのに効果があり,自分を表現する場となった。(3)まとめ
生徒個々人の学力や性格,生活環境などを考慮しながら,授業や生活記録,学年通信そして係の仕事等で,その生徒の個に応じた認め方,認めてやる場を提供してきた。教師の指導援助の方法は,授業では,基本的な学習態度を身につけさせ工夫と自発性をうながす手だてをどうするかの工夫であった。