福島県教育センター所報ふくしま No.74(S60/1985.12) -024/038page

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8.特別活動及び道徳に関する実践〔省略〕

9.意識調査

問 あなたは.養護学校の友だちをどう思いますか。ひとことだけ書いてください。
 この質問に対しての回答を次のような観点で整理し傾向別に集計した。

  傾      向 具 体 的 な 回 答 例
A 何らかの形で自分たちとの共通点を述べたり,美点をあげたりしたもの 同じ人間,一生懸命生きている,えらい,かわいい,素直な人,心がきれい 等
B 同情や,あわれみが中心となっているもの かわいそう,気の毒,悲しそう,早くなおしてあげたい 等
C 拒否,忌避の感情が中心のもの 気味が悪い,きたない,好きでない普通の人と全然ちがう 等

図 1 図 2
図 1 図 2
(昭 58.5.20) (昭 59.9.11)

 図 2では,交流前の調査(図 1)と比較して,A傾向を示す割合が約2倍に増えている。交流前の漠とした同情,哀れみが,「養護学校の生徒も自分たちと同じ人間なのだ」「変な同情はいけない」「一生懸命がんばっているので感心した」「普通の友だちとしてつき合いたい」などと,望ましい傾向へ変容している。ただし,この種の調査にありがちな志向性,つまり,指導による概念とか理性による回答も含まれていると推察することは,まちがいではないだろう。
写真
 C傾向が,わずかであるが交流前より増えているのは,生徒たちの正直な感想だと思う。「手がかかるのでつき合いたくない」「身勝手なのでいやだ」「こわい」「関心がない」などと書いてあるのは,心身障害児に対する真の理解とはいえないが,ある程度知ったがゆえの実感だろうと推察する。

10.職員の感想

(1)本校職員

  …真実を体得して‥・        3年担任 女教師 A
 心身障害児に対する心情は私自身にも多少偏見があり,同情.哀れみの域から脱し得ないものであった。生徒たちもおそらくそのようなものではなかったかと思われる。しかし,そんな状態に一石を投じられたのが,大石邦子さんの静かな叫びであった。
 1年目は,自分たちのできるだけのことをして喜ばそう,手助けしようと張り切って計画し,準備をし,心はずませていた。しかし,現実に心障児との接触が深まるにつれ計画どおりにはいかず,意思も通ぜず.生徒たちには戸惑いとあせりが見られた。自分たちと同じ年齢で,体格も同じなのに心の動きや考えていることがまったくといっていいほどちがっていて,なかなか彼らの心の中に入れないことを私たちより深刻に受けとめていたようである。
 2年目には最上級生でもあり.下級生からは「さすが先輩」といわれ,交流そのものはスムーズにみえたが.それでもわかればわかるはど,悩みは消えなかったようである。つまり,一口に心身障害児といっても三人三様であり,前回はこういう交流で喜ばれたが今回はだめだったとか,同じ相手でも前回と今回とではちがっていたとか,個々への対応のしかたがむずかしかったようである。言いかえれば「一人一人障害の程度が異なり,健常な生徒たちが推測されない個性がある」ということを実感として体得したのである。これは傍観では得られない理解であり,このことから,やがて,ほんとうの思いやりの実践化が生まれるのではないかと信じている。

(2)養護学校職員

 ……富二中の生徒の変容について……
・ 1年次は何もできないから教えるんだという態度がみられたが.理解を深めていくにつれて関心をもって共に学ぶという姿も見られるようになった。純粋に養護学校の子どもを受け入れ,単なる思いやりだけでなく,どうしたら活動にうまく参加させられるかという工夫をしていたのは,すでに自分と密接な関係として障害児を理解しようとしているあかしである。
・ 富二中生は,世の中には障害をもつ子どもたちもいるんだということを知り,人生の良い勉強になったと思う。大半の生徒は,何らかの形で変容がみられたと思うし,それが回を重ねるごとに交流の際の態度にも表れていた。また,知恵おくれという状況の中でも,十分に人間らしくあることのできる姿を感じとったことと思う。

11.保護者・地域への啓発

 文部省がこの事業を推進する目標の一つに,「趣旨については,当該学校のみならず,地域社会にもその浸透を図ってほしい」ということがあった。したがって,次のことを行った。
(1)PTA総会,学年PTA等の機会に,学校長から本研究の趣旨説明。
(2)PTA広報誌による啓発。
(3)大石邦子さん講演会


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