福島県教育センター所報ふくしま No.74(S60/1985.12) -026/038page

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研究プロジェクト状況報告

中学校における身近な素材を活用した理科指導

科学技術教育部  高野 忠夫

1.はじめに

 理科指導の基本は「自然の事物・現象について直接経験を重視し,自然環境についての基礎的な理解を得させ最終的には,総合的な自然観の育成」にある。しかし現実には抽象的な科学概念を強調するあまり,結果として理科ぎらいな生徒や,内容不十分な理解の段階にとどまっている生徒,断片的な事項の暗記にのみ終わっている生徒が増加しているのも事実である。
 これは,特に具体的な身のまわりの自然現象に目を向け, 科学的な思考力の育成に視点をおいた指導を軽視していることに起因していると思われる。
 生徒に,直接経験できる学習素材をできるだけ多く与えることは,生徒の学習意欲を高め,さらには,学習内容の定着度の向上に結びついていくと思われる。
 したがって,理科の指導にあたって,「身近な自然や素材」を学習の対象とし,これをいかに活用していくかについての研究は,非常に意義のあるものと考える。
 そこで,当教育センターでは,「身近な自然や素材を活用した理科指導」のテーマを設定し,昭和59・60年度の2年間にわたって,学校現場の協力を得ながら,授業実践及び検証をかさねて,現場に役立つ資料の作成をめざした研究を進めている。

2.研究のねらい

(1)中学校理科の学習内容を分析し,指導上困難な問題点を抽出し,それを解決するための身近な素材の活用について考える。
(2)生徒の学習の定着度を高める身近な「素材の洗い出し」と「活用方法」について検討する。
(3)現場教師による授業実践を通して,素材の活用の効果について検証を行い,各学校における利用に供するようにする。

3.研究の手順と概要

 研究は,次の(1)〜(5)の順で具体的に実践を行っている。
(1)「身近な素材」についての定義づけと活用の意義を明確にする。

  1.  定義づけ
     身近な素材を,a「生徒の生活行動の範囲にある素材」b「興味・関心のある情報としての素材」c「指導上手軽に得られる素材」の3つのカテゴリーより,構成し,単に,「身近な自然」としてのみとらえるのでなく,子どもが,日常生活の中で,身近に経験している諸事象の中での興味・関心のあるものにし,図 1のように定義づけを行った。
    図−1「身近な素材」についての定義づけ
            図−1「身近な素材」についての定義づけ

  2.  活用の意義
     身近な素材をできるだけ多く学習内容に取り入れ展開することは,学習意欲を高め,学習内容の定着度を高めることになり,その活用の意義はきわめて大きいものと考える。なお,活用の効果として次のような点が考えられる。


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