福島県教育センター所報ふくしま No.74(S60/1985.12) -027/038page
(ア)学習内容に課題意識(問題意識)を持たせる効果
(イ)具体的な素材を用いることにより,直接経験の場を与える効果
(ウ)身近な素材から,法則性,規則性を養うことのできる効果
(エ)情報量を精選し,科学的に思考できる能力を養うことのできる効果
(オ)身のまわりの環境に対する関心や態度の変容を期待できる効果
(2)中学校理科学習内容の分析と,「指導上困難な部分の抽出」をする。(表 1)
(3)「理科指導上の問題点」を理解するために,「身近な素材」を活用して,いかにアプローチできるかを検証する。
(4)現場の教師が,多くの身近な素材を利用し,授業実践を行い,検証を通じて素材の活用の効果について確かめる。
(5)研究集録を作成する。4.研究内容のまとめ方について
研究集録の作成にあたっては次のような事項について留意してまとめるようにする。
(1)中学校理科指導上の問題点をもとに,それぞれの題材ごとに,その問題点を十分に把把する。
(2)仮説には,問題点解決のための身近な素材の使用法,及びその使用により期待される効果すなわち,生徒はこのように活動し,変容し,このようになるであろうことについて述べる。
(3)指導過程については,特に,身近な素材の利用部分を強調するようにする。
(4)検証については,身近な素材の利用による効果がどの程度認められるかについて,一群法,または二群法等の方法,及び事前,事後,把持テスト結果等の検証方法を用いて確かめる。
(5)結果,考察,まとめについては,現場での利用にあたって,留意する点にも触れるようにする。
表−1「中学校理科学習内容の分析と問題点」
中学校理科の学習指事上における教材とその問題点(第一分野)
教 材 学習指導上の問題点 「身近な素材の活用」を
中心とした解決策小単元・内 容 物質とその変化 1 物質の性質
・見分け方
・物質の三態
2 物質のもえかた
・酸化とその生成物
3 加熱と化学変化
・加熱分解・化合
4 物質の体積と重さ
・気体の密度1.酸化物の質量増加実検が困難である。
2.実検における基礎操作が不足していて用具の破損,結果の不確実性,大きな誤差がでやすい。
3.気体密度測定に誤差が大きく,正しい測定が困難である。1.アルミ皿の上でマグネシウムを燃やすことによる指導
2.空き容器,空きぴんなどを活用し個別化を図る指導
(フィルムケース,ジュース缶,しょうゆ容器)
3.アセトンを温湯で気化することで理解を深める指導。
・ガスライター中のブタンガスの密度測定の実験
・ビールの空き缶利用による指導力のはたらき 1 力
・力とは
・力の表わし方
2 力のつりあい
・「2力」のつりあい
・「3力」のつりあい
3 圧力
・圧力と液体の圧力
・水圧
・浮力1.矢印により表された力と実際の力について関連づけて認識することがむずかしい。
2.2力,3力の力のつりあいについて。
つりあう条件とその内容の理解が困難である。
3.力と圧力概念の区別ができない。
4.水の圧力と深さの関係が十分認識できない。1.力の大きさの体験
・1kg重…教科書4冊,切ったレンガ石,牛乳バック1lなど
・1g重…1円玉
・10g重…100円硬貨2枚
・100g重…ヨーグルト,プリン
(フィルムケース,ジュース缶,しょうゆ容器)
2.2力,3力のつりあいの体験と説明法。
3.レンガとナイロンの袋を用いて力と圧力の区別。
4.紙コップか牛乳1lバックを用いて圧力と深さの関係又は圧力体験による指導電流 1 電流回路
・電流回路
・電流・電圧の関係と抵抗
・物質の抵抗
2 電流による発熊
・熱量
3 電流と電子の流れ
・電流と電子の流れ
・陰極線1.電流は「こわいもの」「むずかしいもの」という先入観が多く,初めから敬遠しがちである。
2.電流・電圧・抵抗の概念を把握させることがむずかしい。
3.回路図と実配線を結びつけて理解させることが困難である。
4.熟量概念の理解が困難である。1.簡易モーター
・電流計の自作を通しての指導。
2.斜面と砂を用いて電流・電圧・抵抗の概念を認識させる指導。
3.ニクロム線のかわりに.鉛筆(2H位)を抵抗線として用いての指導。
4,教科書と文庫本それぞれ30冊位を用いて熟量概念のデモ実戦による指導。
5.電池を用いた発熱量測定の実験による指導。中学校理科の学習指導上における教材とその問題点(第二分野)
教 材 学習指導上の問題点 「身近な素材の活用」を
中心とした解決策小単元・内 容 生物の世界(一年) 1 身のまわりの生物の観察
・春の花
・身近な動物
・水中の小動物
2 動物の世界
・生活とからだ
・なかまのふやし方
3 植物の世界
・水中,日かげの植物
・種子1.学校周辺の植物についての観察の方法について理解していない。
2.動物の生息場所や観察の方法について理解ができていない。
1.動物のからだのしくみを写真や資料料のみで理解させることが多い。
2.カビの働きとその知識について理解していないことが多い。1.観察記録表の利用
1.ミジンコの培養と観察法の工夫。
2.ケイソウの採取と観察法の工夫。
1.魚の生活とからだのしくみについての指導の工夫(動物の解剖について)
2.身のまわりの動物の体
1.力ビの培養と観察法の工夫。星の世界(二年) 1 太陽・月・地球
2地球は動いている
・星・太陽の1日の動き
・星座の季節の変化
3 太陽のなかま
・星座の星
・宇宙1.星の動きについての実態についての理解が困難である。
2.星の動きと地球の自転の関係の把握に困難がある。
3.天球モデルと観測者の位置関係が理解されていない
4.太陽光線が平行であることが理解されていない。
5.天球モデルに記録された軌道の変化と地球の公転との関係が理解できない。
1.宇宙の広がりや構造についての,いわゆる空間概念の把握に困難がある。1.透明洋傘やこうもり傘を利用した星座の観察
2.自作スライド(カメラ)を使用した星の観察。
3.OHP用星座板の利用
1.黒板にとりつけた画用紙モデルにより学習する方法。
2.アクリル坂とベニヤ板を利用した星の動きの観察。
1.屋外での指導で思考を補助する方法。
1.晴れた日,外で棒を利用し,その影の長さを調べさせる方法。
1.黒板にとりつけた簡単な画用紙モデルを用いて理解させる方法。
2.テニスボール,ピアノ線,電球,ハッポースチロールによる季節変化のモデル。