福島県教育センター所報ふくしま No.76(S61/1986.6) -002/038page

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論  説

自 己 教 育 力 の 育 成

郡山女子大学短期大学部教授  長谷川 壽 郎

はじめに
 自己教育力の育成にかかわる所見は、すでに、所報第66号における「これからの教育と学習指導」において、さらに、所報第71号における「学校教育と学習指導」において、それぞれ言及しているところである。したがって、今回要請された主題についての記述内容において、既述の拙論内容との重複はまぬがれないところが生じるであろうと考えられるが、今回は、自己教育カの育成を正面に据えた要請であるので、その重要な今日的課題性の故に、あえて重複をおそれずに要請に応じて述べようと思う。

1.今なぜ「自己教育カの育成」か
 自己教育力の育成という表現は、中央教育審議会の教育内容等小委員会審議経過報告(昭和58年11月15日提出)II時代の変化と学校教育の在り方について4.今後特に重視されなけれぱならない視点(1)、「自己教育力」の育成、と述べられておるところから、特に注目されるようになって来たと考えられる。
(1)ところで、報告におけるこのような提言の背景となるものを、報告の中から摘記すると、「今後における我が国社会の変化を的確に予測することはもとより困難であるが、情報化などの社会の急激な変化は更に継続していくものと思われる。加えて、高齢化の進行や国際社会における責任の増大など我が国社会がこれまで直面したことのない新たな変化や新たな課題に取り組むことにもなるであろう。このような新たな変化や新たな課題に適切に対処するためには、主体的に変化に対応する能力をもち、個性的で多様な人材が求められるものと考えられる。主体的に変化に対応する能力としては、例えば、困難に立ち向かう強い意志、問題の解決に積極的に挑む知的探究心、主体的に目標を設定し必要な知識、情報を選択活用していく能力、自己を抑制し、他者を尊重しつつ、良好な人間関係を築いていくことのできる資質などが重視されるものと考える。
 次代を担う子どもたちが、このような変化に対応し得る能力を高め、未来を切り開いていくことができるようにするためには、関係者の努力によって家庭や地域等の教育機能の充実を図るとともに、とりわけ、子どもの教育に責任をもつ学校教育が社会の変化に対応しつつその機能を高め、その責任を果たすことが不可欠の条件である。」ということになる。
 自己教育力は自己が自己を教育する能力であるが、その内実は、上記のような、社会の変化に対応して生き抜き、よりよい社会を形成発展させる能カでなければならない。今日、この能力を、ひとりひとりの子どものうちに、ゆるぎなく育成していくべき責任が、教育にかかわるすべての者に問われているわけである。
(2)さて、自己教育力の育成の今日的課題性は、次のような視点からも考察することができるであろう。
 今日は、いろいろな意味で教育の荒廃が憂えられ、危機が叫ぱれ、教育の改革が論じられている。われわれは、このような状況の中において、教育の本来性に還帰して、われわれの教育実践をたしかなものにしなけれぱならないときなのである。
 もともと教育は、自己教育に帰結するものである。「自己教育は、自己自身による、独自的な個人としての自己の教育である。自己教育は、全体的な教育の主要な部分であり、すべて他人教育は、


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