福島県教育センター所報ふくしま No.76(S61/1986.6) -004/038page

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いる事象ではありながら、すべて、他人教育は自己教育を目ざめさせるべくあらねばならないし、自己教育は、自己が真に自己をよりよく、より高く形成するために、他人教育をすすんで求めるのでなければならない。このようなかかわりにおいて、生涯にわたって並存するとしなければならないであろう。なお言えぱ、 の(2)のように言表できるであろうし、昭和10年刊の篠原助市博士著すところの増訂教育辞典自己教育の項の解説の末尾に述べられてある「凡ての教育は自己教育なり。(All education is self-education)とも言ふを得べし。」のように結んでもよいのではなかろうか。
(2) 自己教育の基本的原理
 自己教育を展開する、その展開を支えるという場合、つぎのような諸原理が導灯となると考える。
1 人間は遺伝や環境によって一義的に形成されるのではなくて、遺伝・環境の条件をふまえつつ、教育的はたらきかけを受けとめることを通して、みずから、人間となっていく。その限り「人間とは、人と人との間にあって、自己を形成していく存在」としてとらえられる。(山下栄一、教育心理学、芸林書店、P.31参照)という人間観にもとづく。
2 私というこの自己は、宇宙における唯一無二の独自の存在であり、自由と責任において他と共に生きていく存在であるという自覚によって導かれる。−他人教育は、人がこの自覚に到るようにつねに援助するのでなけれぱならない。
3 自己自身を教育する者は、教育の諸目標を、自己における「よりよい私」の方向において(in seinem “besseren Ich”)洞察し、自己の形成を自己超越において展開する。(Joset Dolck,-Grund-begriffe der pädagogischen Fachsprache,Ehren-wirth Verlag,München,1965 参照)
4 人間は誰でも、失敗や挫折などをのりこえ、どんな境遇に在っても、意味深く生きていくことができるという自覚に立って、未来を志向する態度(価値追求)−自己内省(自己認識)−自己改造のサイクルによる螺旋的上昇過程が自己教育の過程を構成する。(第一法現、教育学大辞典3、P.127参照)

3.自己教育カについて
 教育内容等小委員会審議経過報告においては、「自己教育力」について、つぎのように述べている。「自己教育カとは、主体的に学ぶ意志、態度、能力などをいう。(中略)自己教育力とは、まずもって、学習への意欲である。(中略)自己教育力は、さらに学習の仕方の習得である。(中略)自己教育力は、これからの変化の激しい社会における生き方の問題にかかわるものである。特に中等教育の段階では、自己を生涯にわたって教育し続ける意志を形成することが求められているものと考えられる。」というものである。これを、1学習意欲と意志2学習の仕方の習得3生き方の探究とおさえる向きもある。(河野重男編小学校自己教育力育成の手引、明治図書、pp.12-18参照)
 ところで、1と2は自ら学ぷ力、自己学習力にふくまれ、3は自己自身による自己の生活指導の在り方であろう。そうしてこれらは、自己評価力によってより有効に発動されるべきである。さらに思うに、これら三者は、相互に深く関連し合いつつ、 の(2)において述べた諸原理を総括すると考えられる自己における実存性の自覚にもとづく自己形成の実現要求を根源として機能するもので、これら四者を契機とする全体構造において自己教育力は成り立っていると考えるべきであろう。
自己教育力の図 これを図示すれぱ左図のようになる。
 1.自己学習力。
 2.自己生活指導力。
 3.自己評価カ。
 4.自己の実存性の自覚・自己形成の要求。
 自己学習力は、学習の意味の自覚に根ざし、学習意欲にささえられ、学習の仕方(課題の発見、方法の自己選択、解決の自力遂行、結果の吟味反省、新たな課題の発見等をふくむ)を展開し、知識・技能・態度(情意のあり方を態度で代表させてある)等を身につけ、よりよい自己の形成にあずかる能力である。
 自己自身による自己の生活指導の力とは、自己が自由と責任において他と共に生きていくかけが


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