福島県教育センター所報ふくしま No.76(S61/1986.6) -005/038page

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えのない独自の存在であるという覚醒を基盤に、自律、自己理解、自己実現の能力を発動し、適応生活をいとなみ、さらに自己超越を果たして創造生活をすすめることの自助能力として機能するものである。
 自己評価力は、1自己目標達成行動を展開して、何がわかり、何がわからないか、何ができて、何ができないかがわかる力、2絶対的に、及び相対的に自分の位置がわかる力、3どのように行動(学習)すればよいかがわかる力の総合であると見られる(児童心理442号P.162参照)
 自己の実存性の自覚・自己形成の要求は、人間だれも本来具有するところではあるが、意識の層に十分あらわれるには、他人教育の働きかけを要するのである。

4.自己教育カの育成について
 人間は自ら自己教育力を発動していく生活をしていくことを通して、その自己教育力をよりたしかなものにしていくことができる。このことは、自己教育力の育成といういとなみである。また、教育をする者が、被教育者(こどもや若者やさらに他人教育を求めている大人)が自己教育力をたしかなものにしていけるように働きかけをしてその効果をあげるように工夫努力すること、これまた自己教育力の育成である。もちろん後者は前者のためにあるのでなければならない。以下は、いわゆる他人教育が、自己教育力の育成にあたって留意しなければならないと考えられることを思い浮ぷままに記してみることにする。より精密な考察のよすがともなれぱと思う。
(1)自己教育の基本的原理について( の(2)に述べた)たしかな理解をもっていなければならない。
(2)そのたしかな理解の上に立って、あくまでも個に即して−個の現在の状況と、それがかくあるようになってきた内的生活史の状況とを共感的に理解することを通して−望ましいあり方への援助の手だてを講じるということ。
(3)自己教育力の育成は、家庭・学校・社会を通じて、それぞれの立場において行われるとともに、連けいして行われなければならない。
(4)自己教育力の育成にあたっては、当然、その構造契機の1つ1つについて援助の手だてを工夫実践しなけれぱならない。
(5)教育方法機能の発動としては、つねに、いわゆる生活指導(生徒指導)の機能の発動が前提されるべきであると考える。たとえぱ、自己学習の能カの育成には、日常、自律・責任等の生活の実践が指導され、その機能が有効にはたらいていることである。自己評価の能力の育成にしても、日頃反省の生活態度が養成されていなくてならない。
 実存性の自覚の問題など、日常における適切な事態における呼びかけのあり方にかかわることである。
(6)学校教育における自己教育力の育成については、教育内容等小委員会審議報告にある関係表現、基礎・墓本の徹底、個性と創造性の伸長、文化と伝統の尊重の内容は、自己教育力育成の内実を構成するものと考えられるので、各説明を十分吟味しその取り扱いの具体において有効性を高める努力をするのでなければならない。
(7)県下の小・中学校においては、すでに自己教育カの育成にかかわる実践研究が、「自ら追究する授業の創造」とか、「効力感を育てる授業の創造」とかの主題のもとに行われて、然るべき成果を収めている。それらを、創造的に活用する必要があると思う。
(8)子どもの自己教育力を育成するには、教育に当る者達が、自らの自己教育力を高めていく存在でなければならない。学校の教師には、とりわけそのことが求められる。21世紀にむかって、教育はきびしく問われている。われわれは、自らの自己教育力を確かにし、子どもと共に育つ共育者として、この問題の解決をはからなければならない。

おわりに
 家庭・学校・社会のそれぞれにおいてどのように対処すべきか、特に学校においては、学校経営、学級経営、各授業の実際について、幼小中高にわたって具体的に考察すべきであるが、それらの序論めいたものにとどまった。自己教育力の育成と学習指導については所報71号の拙論の参照を願う。


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