福島県教育センター所報ふくしま No.76(S61/1986.6) -006/038page

[検索] [目次] [PDF] [前] [次]

小・中学校教材(図画工作・美術)

子どもの発達に即した色彩指導

学習指導部  田 中 四 郎

1.はじめに

 子どもたちが、野辺にある花や草を絞って色水をつくり、色水をジュースに見立てて、ままごと遊びをする。水彩を初めて手にしていろいろな色遊びをする。そのようなときの子どもたちの目は、色の魔術師にでもなったように輝いている。色で遊ぷことは、様々な想いを色に託し、その色を美しいと感じながら、色を楽しんで使うのである。
 このような情緒的な色遊ぴの中で、子どもたちの色に対する反応が強調される。色の美しさを感じることのできた子どもたちは、色の大切さを知り、やがて豊かな色彩感覚を育てていく。同時に、色に対するマナーを身につけ色の効果的活用を意識し、美しい景観までも求めるようになるであろうと思われる。
 しかし、現代社会を見るとき、「色の無秩序が日本の生活文化の中で最も遅れている点である」とも言われている。色彩の景観への配慮は、無計画な広告や案内の看板一つをとっても貧困であると言えよう。したがって、そこには、生活を豊かにする色の調和などの効果を見い出すことはできないのである。
 このようなことは、少なくとも大人の美的情操や色に対するマナーが不足していることの反映と言えよう。無秩序な色の存在を見るとき、色の美しさにひたり遊ぷ子どもたちの純粋な心情が、やがて現代社会の色の洪水の中に吸収され、鈍麻してしまうことが心配されるのである。そして、このような問題は、結局は、教育の問題に帰着してくるのである。
 子どもたちが、大人になったとき、どのような職業に進もうと、共通して美しい景観を求め、醜い景観を批判的に見ることができ、改善しようとする意識がもてるような美的情操と教養をもつ人間に育つことが望まれる。そのために、さわやかで楽しく、活動的な雰囲気を生み出し,暮らしを豊かにする色彩を体験させ、色に対する鋭い感覚とマナーを身につけさせたいものである。
 我々教師は、子どもたちが、やがて社会人として必要な、確かなものの見方や考え方を身につけさせることまで考えた人間教育という広い視野を指導の根底に持って、色彩指導を考え、美術教育を進めることが大切になると思われる。
 そこで、「子どもの発達に即した色彩指導」をテーマに取り上げ、
 ・児童生徒の色彩に対する関心を高める。
 ・児童生徒の発達に即した色彩の扱いをする。
 ・学習の生活化を図る。
などの観点から、考察をすすめることにする。

2.色彩指導の基本的姿勢と留意点

 色彩指導は、児童生徒の発達段階に応じた表現活動を通して、感覚的に感じる能力を高めることが大切である。しかしながら、絵を描いたり、デザインをしたりなど製作をさせていさえすれば色彩感覚は養われると考えるのは誤りであろう。よって、色彩指導の基本的姿勢としては、色彩を理論的に知識として覚えさせるのではなく、何らかの表現活動とのかかわりの中で、感覚的に受けとめさせたいと思う。すなわち、子どもたちが色の明るさや暗さ、色あいの違い、あざやかさの違い、混色や配色の効果、いろいろな色の機能などについて感じとられるような指導への配慮が必要なのである。そして、色彩体験させたことの裏づけとして、必要に応じて、色彩の知識について理解させることが望まれるのである。


[検索] [目次] [PDF] [前] [次]

掲載情報の著作権は情報提供者及び福島県教育センターに帰属します。