福島県教育センター所報ふくしま No.76(S61/1986.6) -007/038page

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 色彩は、形とともに造形教育全領域にかかわる重要な位置を占めるものである。したがって、色彩指導は、発達段階に応じて系統的に指導されなければならない。
 次に、それぞれの発達段階における色彩指導の留意すべき点について、学習指導要領指導書に示された内容に沿って述べることにする。

(1) 小学生の段階
学習指導要領の内容 色 彩 指 導 の 留 意 点
1年 ・クレヨン、パスなどの好きな色で思いのままに表すこと。
・使うものの主な色名を覚えること。
・子どもの興味や関心をそそる色選びを工夫する。
・色による遊びなどを通して、色を使う楽しさを味わわせながら10色程度の色名を覚えさせる。
2年 ・クレヨン、パスなどにいろいろな色があることに気付くこと。
・前学年より使う色の種類を更に増やし、それらの感じの違いに気付くこと。
・花や虫、石ころなど身近にあるものを並べるなかから、自然発生的に色のなかま分けをさせ、色あいの違いなどに気付かせ、色に興味をもたせる。
3年 ・色の暖かい、寒いなどの感じに気付くこと。 ・身の回りにある布切れやレッテルなどの色を集めさせ、似た色、暖かい感じの色、冷たい感じの色などに、子どもたちの感じ方を大切にして分類させながら、色の感じに気付かせる。
4年 ・表すものの感じに合わせて形と色を考え、混色、重色などの工夫をして表すこと。
・色の明暗などの感じに気付くこと。
・明暗の感じ方は厳密な理論的なものでなく、体験によって、白から黒までのいくつかの段階を感じとらせながら気付かせる。また、明るい感じのする色、暗い感じのする色、強い感じのする色、弱い感じのする色などについて、その感じに気付く程度のものを計画的に扱うことが必要である。
5年 ・動きの感じ、色の明暗、強弱などの感じを生かすこと。
・色などの特徴をとらえ、その感じがでるよう工夫して表すこと。
・グラデーションから、動きの感じについて理解させたい。
・鮮やかな色、にぶい色、強い感じや弱い感じの色などを、子どもの感じ方を大切にし理論が先行することなく、子ども自身が経験的に学びとれるように留意する。
6年 ・遠近、明暗などに気付いて色を工夫して表すこと。
・色などの性質を総合的に生かすこと。
・色の違いによって、遠近が表せることを実感として気付かせる。
・情緒的な刺激を伴った経験を通して、色の様々な性質に気付かせる。

(2) 中学生の段階
学習指導要領の内容 色 彩 指 導 の 留 意 点
1年 ・色の類似や対照の調和を考えて配色すること。 ・色の三要素は、単に言葉による説明で理解させるのではなく、感覚的にとらえさせ、混色や色の選択、配色など実際の造形体験に生かせるように配慮する。
・三要素のいずれかに焦点を当て、それぞれの要素について、類似や対照の配色を明瞭にとらえさせるために、実感としてうけとめれるように留意する。
2年 ・色の面積や配置の調和を考えて、配色すること。 ・色の「調和」(色の関係がほど良く整っている)は、「面積」や「配色」によって、様々に変化することを感じとらせるようにしたい。
・対照や類似の効果、強弱のバランス、更には主調色とその効果について、調和のある配色をさせる。
3年 ・今まで学習したものを総合的に生かした配色をする。 ・進出後退、膨張収縮、目立つ目立たないなどの色の機能性に目を向けさせ、その感じを色彩を駆使して自由に配色させる。

3.色彩指導の実際

 子どもの発達段階の特徴としては、7才〜9才の時期に色と物との間の関係を悟り、色彩様式が決定され、9才〜11才の時期に以前に得た固定的色彩様式から離脱しはじめると言われている。これらの時期に、どのような色彩体験を与え、どのようなことを学習させるかを系統的に計画し指導することが特に大切になると考える。 また、特に小学校下学年においては、図画工作に時間だけ色彩を問題にするのではなく、例えば、四季折々の草花や季節とともに変化する木の葉の色、空や雲の色の美しさ、さらに、落葉や小石の形、雲の形などのおもしろさなどに目を向けさせ、いろいろと空想をふくらませるといった経験を学校生活の様々な機会をとらえて与えることが大切であると思われる。このような、ちょっとしたことを子どもたちに気づかせようとする指導者の心が、色や形に対する子どもたちの関心を高め、色彩感覚を豊かにさせると同時に、感受性や創造性を育てる基として大切であると考えられる。


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