福島県教育センター所報ふくしま No.76(S61/1986.6) -009/038page

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指導事例II・中学2年 「私の印象」

● 題材設定の理由

 生活空間に存在する多くの色彩を意識を持って見させ、自然の色彩の豊かさに気付かせるとともに、生活空間に存在する様々な色彩に対して、批判力を養う。

● 学習のねらい

 色の面積や配置の調和を考え、イメージに合った色面構成をさせる。

● 学習の条件

(1)生活空間における印象を、色の美しさや面白さ、調和のとれた空間、また、不調和で醜くい様子などに目を向けさせ、色彩カードを参考にして、できるだけ多くの色名を織り込んだ文章で表現する。
(2)文章に表現した情景をカラーイメージとしてとらえ、水彩を使用して表現する。
(3)イメージ表現は、八ッ切りの画用紙に一辺が20cm〜25cmの正方形をつくり、その中を一辺が5cmまでの正方形で構成し、できるだけ平面に彩色する。

● 指導上の留意点

(1)色彩の「調和」について、実感として受けとめることができる資料の準備をする。
(2)色が、その面積や配置の違いで変化して見えることが実感できる資料の準備と演習をする。

● 学習の過程 (4時間)

(1)文章表現をもとに構想を練る。
(2)八ツ切りのケント画用紙に構想を整理する。
(3)彩色する。
 ・色は、かならずためし塗りをして良く観察させる。
 ・彩色はできるだけ平面にさせる。
 ・彩色に苦慮している生徒には、生徒の話しを良く聞き、生徒の考えを引きだすよう配慮する。
(4)鑑賞する。
 ・文章表現からカラーイメージとして構成に至る製作意図を発表させ、一人ひとりの作品の独自性、独創性に気付き認め合えるようにさせる。

4.おわりに

 子どもが、色を選択する場合に、年少児ほど何の色はこれ、何の色はこれと思いこんでしまって選択していることがずい分ある。子どもが固定化した色彩様式から離脱でき、独自性のある豊かな色彩感覚を身につけるため、一人ひとりの子どもに適切な色彩指導をすることが要求される。
 そのためには、教師自身が、色彩の基礎知識を感覚的に受け止めながら理解を深めておくことが大切である。そのうえで、色彩の指導にあたっては、子どもの年齢や実態に応じ、多くの情緒的な経験を通して、良く感じ取らせる方法を講じ理解を深めさせるようにしたいものである。
 今、教師が、子どもたちになすべきことは、子どもたちの色彩についての関心を高め、豊かな感覚を身につけようとする積極的な意欲を持たせることである。子どもたちの気持ちを大切に、ともに学ぷ姿勢で努力したいものである。

<参考文献>
 ・美術による人間形成   V・ロ一ウェンフェルド著
 ・美術科教育の基礎知識 宮脇 理監修
 ・色その科学と文化     江森康文他編
 ・デザイン心理入問     小林重順著
 ・描画のための色彩指導 芸術教育研究所編


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