福島県教育センター所報ふくしま No.76(S61/1986.6) -010/038page
中・高等学校教材(理科・地学) 園芸用土を用いた「鉱物の観察」について
科学技術教育部 佐藤 輝夫
1 はじめに
火成岩の造岩鉱物やマグマの性質を学習するためには、基礎的知識を備えていることが必要である。そこで、生徒の直接経験を通して、興味・関心を高めながら、鉱物の結晶の形、へき開、多色性、干渉色などを観察するための方法として、手軽に、しかも安価に入手できる幾種類かの園芸用土を利用すると、その中に、いろいろな種類の鉱物が入っていることを学習することができる。
そのための教材としての利用について紹介する。2 実験の方法
火山灰土は、園芸品店等で、入手しやすく、しかも鉱物を取り出す処理法も簡単である。また含まれている鉱物も、中・高校で扱う火成岩の造岩鉱物のほとんどを含んでいる。結晶も岩石中で観察するのと違って、美しい単結晶のまま単独で見られるのが多く、鉱物の識別・特徴をとらえやすい利点がある。A 鉱物分離の手順
〔準 備〕
園芸用土(数種類)、ペトリ皿、蒸発皿、アルコールランプ、柄付針、竹ベラ、ルーぺ、ラベル、乳鉢、セロハンテープ、スライドガラス、解剖または双眼実体顕微鏡、塩酸(20%)
〔方 法〕
1.大粒の園芸用土を4〜5個、ペトリ皿に入れ、水を少し加え、親指でこれをすりつぷす。
2.これに水を加え、にごり水を流し去る。
3.ペトリ皿の底に鉱物粒が残るまで、同じ操作をくりかえす。
4.残った鉱物粒を乾燥させる。はやく乾燥させたいときはアルコールランプで軽く熱する。
5.ペトリ皿の底にある鉱物粒をそのまま、解剖顕微鏡または双眼実体顕微鏡で観察する。
6.スライドガラスにのりを指でうすく塗ったものに、またはセロハンテープの上に、乾燥した鉱物粒をぱらまき、それらを解剖顕微鏡または双眼実体顕微鏡で観察してもよい。
7.また、鉱物粒の表面の鉄化合物を中心とした風化膜をとり除くための処理として塩酸(20%)を入れ、5分位加熱して脱鉄処理をする。脱鉄処理の終わった鉱物粒は十分に水洗いした後、おだやかに加熱乾燥させ観察してもよい。B 解剖顕微鏡・双眼実体顕微鏡による鉱物の観察
身近な園芸用土中には、いろいろな構成鉱物を見ることができる。
1.セキエイを選び出し、その形や色について調べる。
2.チョウ石やセキエイの違いを調べる。
3.クロウンモ、カクセン石、キ石、カンラン石があれぱ、その形や色について調ぺる。
4.磁石を使って磁性鉱物を選び出し、その形や色について調ぺる。
5.できるだけ多くの試料について観察した後,