福島県教育センター所報ふくしま No.76(S61/1986.6) -012/038page
ている。解剖または実体顕微鏡下で観察できる鉱物としては、次のものがある。
有色鉱物:磁鉄鉱・カクセン石・キ石・クロウンモ
無色鉱物:セキエイ・チョウ石(2) 赤玉土
栃木県内で採掘されている赤玉土は、関東ローム層(上部)の田原層中に介在する今市軽石層と呼ばれ、七本桜軽石層の下にある赤褐色の軽石層と考えられる。水気をおびると一層赤味を増す。鹿沼土と比較すると、スコリアを含んだ磁鉄鉱・両キ石に富み、無色鉱物(珪長質鉱物)に乏しいこと、比較的分級の良い茶褐色細粒の降下火山灰であることなどから、この軽石層の供給源は男体山に求めるのが妥当であろう。鏡下では、磁鉄鉱と長柱状のしそキ石とが美しい自形を呈する。
有色鉱物:キ石・磁鉄鉱・カンラン石・カクセン石
無色鉱物:セキエイ・チョウ石(共に乏しい)(3) 桐生土
群馬県桐生市付近で採掘されている桐生土は、主に軽石と本質岩片とからなる分級不良の安山岩質火砕岩である。長柱状のしそキ石と磁鉄鉱とに富み、無色鉱物に乏しい点は赤玉土に似ている。
鏡下では、次の鉱物が観察できる。
有色鉱物:磁鉄鉱・キ石・カクセン石
無色鉱物:セキエイ・チョウ石(共に乏しい)(4) パミス(軽石)
火山砕屑物の一種で、多孔質で見かけ比重が小さく白色の軽石凝灰角礫岩である。店頭では約10m/m前後に細かく砕いたものが売られている。
「鉱物分離手順」の1のように、親指ですりつぷすには少し堅すぎるので、鉄製乳鉢の中に4〜5個のパミスを入れてくだき、これをペトリ皿に移し、手順2以下に従って鉱物粒を採集する。
鏡下では、無色鉱物のセキエイに富み、磁鉄鉱と長柱状のしそキ石とが美しい自形を呈する。
有色鉱物:キ石・磁鉄鉱・カンラン石
無色鉱物:セキエイ・チョウ石(共に富んでいる)(5) バーミキュライト
単斜晶系に属し、へき開が完全な六角板状の粘土鉱物である。クロウンモが風化や熱水によって変質して生ずる。急熱すると層間水が脱水して膨張・剥離しミミズのように動くことからヒル石と称されている。園芸品店で入手できるバーミキュライトの大きさは5〜10m/m程度であり、カコウ岩中の小さなクロウンモを針で剥がすよりも、はるかに容易に薄く剥がすことができる。
手順は、ペトリ皿に4〜5個の試料を入れ、その中に塩酸(20%)を入れ、5分間位加熱して脱鉄処理をする。その後、十分に水洗いした後、試料を水の中ですりつぷし乾燥させる。ペトリ皿についている試料をセロハンテープで剥がし取りそれを顕鏡してもよい。
有色鉱物:クロウンモ園芸用土中の鉱物組成
(凡例 ◎:富む ○:含む △:少し含む ・:稀に含む)
磁鉄鉱 しそキ石 普通キ石 カクセン石 カンラン石 クロウンモ セキエイ チョウ石 鹿 沼 土 ◎ ○ ○ ○ ・ ◎ ○ 赤 玉 土 ○ ◎ ○ △ △ △ △ 桐 生 土 ◎ ◎ ○ △ △ △ パ ミ ス △ ○ ○ ・ ◎ ◎ バーミキュライト ◎
・磁鉄鉱は小形棒磁石で選び出すことができる。園芸用土中の鉱物は、一部を除いては水洗いすることにより手軽に取り出すことができる。
1.身近にある園芸用土の中から、容易に鉱物を自分の手で取り出すことができ、ルーぺや解剖顕微鏡・双眼実体顕微鏡で観察できる。
2.少量の園芸用土の中に、多くの種類の鉱物粒があり、かなり整った自形の美しい光沢をした鉱物の結晶が見られるので、発見の喜びが味わえ、探究心を喚起することができる。
3.生物顕微鏡に簡易偏光装置を取りつけ、光源装置を工夫し、鉱物の結晶形や干渉色などを観察することにより、生徒の鉱物に対する