福島県教育センター所報ふくしま No.76(S61/1986.6) -017/038page
教育相談(事例) 不登校を克服した事例
教育相談部 藤本 忠平
1.主訴 不登校
2.対象 A子 中学校2年生(女)
3.問題の概要
A子は、中学2年になった4月初めころから、頭痛や腹痛で学校を早退する日が多くなった。養護教諭は、本人から、よく眠れなくなり、朝起きると頭が重く、吐き気がしたりすると訴えられたので、学級担任と相談の上、医師の診察を受けるようすすめた。
診察の結果、身体的には異状がないとのことであった。しかし、A子は、その後も回復せず、起床が次第に遅くなり、ふとんを頭からかぷって起きない日が多くなった。それぱかりか、起こそうとする母親を突き倒したりするようになり、5月以降、登校しなくなった。4.資料
(1) 身体的特徴
分娩は正常、主に祖母が育児にあたり、人工栄養で順調に成長したが、かぜをひきやすい。
(2) 知能・学業
知能偏差値53、幼稚園時代に登園をしぷったことが時々あった。学業成績は普通であるが、中学になってから下がり気味である。体育が苦手で、体育の授業になると保健室で休む場合が見られた。
(3) 交友関係
小学校時代は、おとなしいためいじわるされたことがあった。いつもためらいがちで、親しい友人ができなかった。中学1年の終りごろ、皆と一緒に行動しないという理由で、女子のツッパリグループから暴カを受けたりした。
(4) 性格・行動
小学校6年まで爪かみが見られた。いつも、素直でおとなしいが、ためらいが多く、引っ込み思案な面が母の気に入らず、度々、叱られるので不案になり、母を避けるようになった。この検査では、情緒不安定、社会的不適応、非活動的、非主導的な傾向が強いという結果が得られた。従って、A子は、抑うつ状態にあって、情緒も安定せず、学校生活に適応できないで、一人じっとしている傾向が表われている。
また、不安傾向診断検査(GAT)の結果をみると、孤独傾向、自罰傾向のほか、特に対人的不安傾向が強いなどの特徴がみられる。対人不安が強いと人前に出ることを避け、ささいなことでも気になり、叱られるといつまでも悩む場合が多い。
(5) 家族構成
入婿の父は、農業のかたわら、工場に勤務している。一人娘として育った母は、親類の会社の事務員をしており、勝気で口やかましい。姉は、母と似て社交好きで活発な短大1年生である。祖母は、口達者で家の中では、事実上の家長的な存在である。