福島県教育センター所報ふくしま No.77(S61/1986.8) -002/038page
中・高等学校学習指導(社会) 生徒を主体的に参加させる社会科の授業
学習指導部 深 澤 陽 一
1.はじめに
中学校・高等学校において,社会科が生徒に好かれない理由として.内容が過多で,詰め込み主義・暗記主義に陥っていることが,多くの調査で指摘されている。
生徒の社会科嫌いを克服するため,主体的に学習に取り組める社会科,わかる社会科の確立が叫ばれており,これにこたえるために多くの実践研究がなされている。これらの実践をふりかえると,生徒に興味関心を高めさせるため,「身近な地域の教材化」のように,教材を中心とする研究,すなわち教材論として示されるものが多いようである。わかる教材興味ある教材の開発研究が重要であることは言うまでもないが,ある学校で開発した教材を他の多くの学校に当てはめることは,生徒が多様化した現状ではなかなか困難であるように思われる。
このような現状を考える時,生徒に興味関心を持たせるためには,教材開発を中心とする社会科研究とは違って,授業の方法の検討も大きな意味を持ってこよう。
この小論は.福島県立福島東高等学校で行った,”小単元を一つのまとまりとし形成的評価を取り入れた”地理の授業実践を通して,具体的な授業手法を検討し,社会科の授業におけるこの方法の有効性を探ろうとするものである。
2.授業実践テーマの視点
(1) 小単元を一つのまとまりとする意味
従来の学習では,1単位時間を一つのまとまりとして授業を行うことが多い。この場合,いくつかの指導目標を50分の中で完結させざるを得ないので,生徒が自ら課題を把握したり,追求したりする時間はどうしても不足がちであり,結論を急ぎ,知識をこまぎれに生徒に伝達する授業になりがちであった。
このような問題点を解決するため,小単元を一つのまとまりとして授業を構成した。このことで,生徒が主体的に課題に取り組む時間が確保でき,追求も可能になると思われるからである。
(2)形成的評価を取り入れる意味
従来,評価とは単に点数をつけるための機能を持つにすぎなかった。はなはだしくは定期テストの点数合計を,回数で割るがごとき悪い評価も見られる。評価とは.本来フイードバック機能を持つものである。生徒には,自分の学習状況が把握でき,到達目標に向かって努力するてだてが示されなければならない。教師にとっては,指導の改善点が把握でき,指導方法の矯正に役立ち,カリキュラムの改善に資するものでなければならない。
この実践では.比較的短い時間でフィードバックが可能な形成的評価を取り入れている。このことによって,教師生徒双方にとり,本来の意味での評価が可能になると思われる。
実際の授業の組み立ては.次の手順で行った。
単元の教材構造の分析→単元目標の分析→単元の授業設計→授業の実施→形成的テストの実施と補充・深化指導
3.授業実践計画
授業を実施する前に,次の(1)〜(10)を作成した。ここでは紙面の都合で,小単元の授業計画の全部,形成的テスト問題,発展的課題,自己評価票の一部を示すにとどめる。
(1) 小単元名 先進資本主義国の工業
(2) 趣旨 (略)
(3) 目標 (略)