福島県教育センター所報ふくしま No.77(S61/1986.8) -006/038page

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小・ 中・高等学校教材研究(理科・物理)

光による通信の利用と教材化

科学技術教育部
村 山 正 之

1.光に関する学習の現状

 光を感じる眼という感覚器官は,人間という生物にとっては.最も基本的で大切なものである。
 このように,意識しなくても毎日必ず感じている光というものについて.小学校・中学校・高等学校のなかで学習する内容がどのようになっているか,光の物理的性質に関するものを拾いあげてみて次のようになる。

光の物理的性質の学習
  学年 内   容

小学校
1
3
5
物の影を利用した活動
光あつめ(鏡・虫めがね)
光の進みかた(反射・屈折・とつレンズ)
中学校 3 光と仕事(太陽電池)
高等学校 〔物理選択者のみ履修〕
○光の進み方(速さ・波長・反射・屈折)
○干渉・回折
 ○スペクトル
○ドップラー効果
○光の粒子性

 表のなかで,中学校の教科書での記述はわずか2ページ程度であり,また高等学校での履修者は高校生の約3割である。つまり,光についての学習は全児童・生徒の7割が小学5年のとつレンズでおわりといっても過言ではない。これでは子供たちのまわりにある光によって起こる種々の事象や現象(スペクトル・しゃぼん玉の色・望遠鏡・顕微鏡・レーザー・光通信 etc)の疑問には,ほとんどこたえることができない。
 現在の理科教育(物理教育)がいわゆる物理学の基本を重視するあまり‥・…これも重要だが‥・‥・身近に見られる現象から遠ざかる傾向にある。そこで,中学生・高校生と学年が上がり自我が発達するにつれて薄れてゆく理科(物理領域)に対する興味・関心を高め,学習におもしろさを見い出せる五感に訴える教材が必要と思われる。

2.なぜいま光による通信の教材化か

 一方,高度情報化社会に突入しつつある今日,その情報量の増大とともに,レーザーを用いた光通信をはじめとして,情報処理,加工,計測,エネルギーそして医療とあらゆる分野に光学の応用技術は広まっている。これまでのように,光を照明やエネルギー源としてばかりでなく,情報伝達や通信手段として日常的に用いる時代が到来しつつある。
 理科教育では,そのような光に関する技術を教えたり学習させたりする必要はない。しかし,なぜそのようになるのか,どうしてこんなことができるのかという誰でも一度は持つであろう事象や現象に対する素朴な疑問にはこたえてやりたい。また疑問がわきだすような教材を提示してやりたい。
 ここでは,児童,生徒にとってはすでに身近な,光による通信の比較的手軽にできる実験を,現在の学習指導要領にできるだけ関連づけながら記してみた。参考としていただければ幸いである。

3.ソーラーフォン〔太陽光電話〕

 小学5年の児童は,光と音について学ぶ。光と音は全く別々に学習するが,この両者を結びつけ

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