福島県教育センター所報ふくしま No.77(S61/1986.8) -016/038page
研修者の感想 小学校算数講座に参加して
福島市立土湯小学校教諭 福士 久子
1 はじめに
算数の時間,1年生の「いくつといくつ」の単元を教えている時でした。おはじきとおはじき板を使って「5は3と2に分けられるよ」「5は4と1にも分けられるよ」と何度も繰り返し学習しました。私の問いにわれ先に手をあげる程で,すっかり調子に乗り,ドリル問題をやってみることにしました。ところが.「7は2とロにわけられます。」との問いを読んだ途端,教室中がシンと静まり返ってしまったのです。子供たちは,ただひとみをくりくりさせて私を見ているだけです。わかったはずなのに…‥。私は反省しつつ,なぜだろうと考えました。そんなとき,ふと思い出したのが,昨年夏に受講した算数講座のことだったのです。1年たった今,遅ればせながらも,この講座のファイルが役立ったことが,私には心強い刺激であり,また改めて“日々新たなり”の言葉が実感として湧いてきました。以下,昨年度の小学校算数講座に参加しての感想を述べてみたいと思います。
2 講義と演習、そしてその後の実践
坂本善一先生の「相談的な教師」と題された生徒指導の講義に始まり,佐藤俊太郎先生の「子どもの思考活動を高める算数指導」の講話,そして遠宮新治先生の「操作活動を通しての授業実践の報告」等,どれひとつとっても日々研さんを積まれた先生方の熱の入った心打たれるお話ばかりでした。子供が牛乳をこぼしてしまったとき,いたずらにこぼしたことを責めるのではなく,「おしゃべりが過ぎたからだね」と言葉をかけてやるような教師のお話を坂本先生からお聞きし,私は,子供を心の底からかわいがる教師でありたいと,強く感じました。そして,算数では,「驚きを与えること」や「多くの考えを出しうること」が大切であり,また,「鑑賞のゆとり」が必要であるということを佐藤先生から学びました。更に,遠宮先生の実践報告から,子供たちの生き生きした姿をかいま見ることができましたし,何より,先生の算数教育に対する熱意,情熱をひしひしと感じ,私も,少しでも遠宮先生のような熱心さを持ちたいものだと思いました。
最も苦労したのが,グループに分かれての評価問題作成でした。目標分析から,指導・学習目標の洗い出し,そして精選,評価問題の作成とひとつひとつ手順を追った問題作りに,私たちは悪戦苦闘しました。しかし.それは,普段,市販のプリントばかりを使っていた私にとって評価問題作りの大切さを痛感させられる時間でした。苦労はしたものの完成間近なテスト問題を見ると,早くこの比例(6年)の単元テストを子供たちに試し成果を分析してみたい気持ちでいっぱいでした。実際,その問題を試してみますと,指導の不徹底な部分や定着の良かった部分など,顕著にはね返ってくることを知り,実に大きな収穫でした。
また,初めの部分で述べた1年生の場合を反省してみますと,あの算数の時間には,佐藤先生が言われるところの「多くの考えを出しうること」や「鑑賞するゆとり」がなかったと思います。見渡せば,教材はいくらでもあるじゃないか。校庭のチューリップだって,山の杉だって,学校に飾ってあるこけしだって何だっておはじきの代わりになるじゃないか。おはじきにばかり固執してその枠から出られなかった私自身,子どもたちの「多くの考えを出しうること」ができなかったようです。
3 おわりに
小学校算数講座を受講して,このように大きな収穫を得られたことを私は本当にうれしく思っています。ひとえに.講義して下さっlた先生方のおかげと深く感謝いたします。
保健体育専攻の私にとって,算数は,あまり縁のない教科でしたが,幸い,土湯小学校は,現職教育で算数を研究していることでもありますし,今後更に,研修で得たものを指導に生かせるよう勉強してゆきたいと強く感じています。