福島県教育センター所報ふくしま No.77(S61/1986.8) -017/038page
研究実践校の紹介 自己理解を深め,進路選択能力を高める進路指導
−進路指導計画の充実と自主的活動を生かす指導法の工夫−川俣町立川俣中学校
1.はじめに
最近,生徒の高校生活における不適応や中途退学をめぐって,中学校・高等学校での進路指導のあり方が問われている。この不適応の要因が高校入学後につくられたというより,むしろそれ以前の中学校時代にすでに準備されていたのではないかと考えられ,中学校における進路指導を入学させることだけを目的とする進路指導から,入学後の適応や高校卒業後の生活までを考えた進路指導にしていかなければならないことを示している。
進路選択の面から生徒の現状を見ると,自分の能力・適性を考えず「何とかなるだろう」といった甘い考えや,3年の進路決定期になってようやく進路を考えるなど,進路意識は高いとはいえない。また,保護者も「入学できればどこでもよい」といった無関心さや,有名校指向で,何が何でも勉強というように,テストの結果や成績のみに頼って進路決定をする例もあり,子供の性格,希望を考えながら,将来を見通した進路選択への援助のできる保護者は少ない。
一方,学校においては,進路指導の意味は理解されていても,実際には目前の進学や就職に重点が置かれ,進路指導は3年担任が行うものと考えている場合もあり,進路指導主事の任務を進学や就職の事務ととらえ,進路指導の組織も確立されていないことが見られる。進路決定に際しても成績・偏差値が重視され「進路指導=進学指導」になっている感がある。このように,現在の進路指導は,入学時から卒業までの計画的・組識的・継続的に行われる進路指導や将来の生き方に目を向けた進路指導になっていない傾向があるように思われる。
人間の一生は自己実現の過程であるといわれる。最終的には職業を持つことによって社会に参加し,自己実現を図る機会が与えられると考えられる。また,人間は自分の特性や能力に合った道に進むとき,自分の本領が最大限に発揮されるといわれる。そこで,自己の特性を自覚させ,将来生かすべき能力を見い出させ,将来の社会生活と結びつけた主体的な進路選択ができる生徒の育成に努めなければならないと考えている。
本校の研究は,学級指導の改善・充実を中核として,一人ひとりの生徒に望ましい進路意識を育て,主体的に進路選択ができるようにすることを目指すものである。
2.研究の仮説
進路指導は入学当初から卒業までの期間にわたって計画的に行われなければならない。そめため
(1)活動内容を明確にした全体計画の作成
(2)学級指導計画の改善・充実
に努めることにより,学級指導が効果的に行われ進路選択能力が高められるであろう。
また,進路指導の主な場は学級指導の時間であるから,
(3)自主的活動を取り入れた授業の実践
(4)事前指導・事後指導の充実
(5)実態に即した資料の作成と活用
を中心とした指導法の工夫により,進路選択能力を高めることができるであろう。
3.研究の構想