福島県教育センター所報ふくしま No.78(S61/1986.10) -009/038page

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6.授業実践の状況
 検証は,昭和61年9月3日.教育センターパソコン研修室で.福島市内のH中学校1年生を対象に行った。男子はパソコンにふれたことがあり,女子は初めてふれる生徒が多かった。
 授業は,課題の提示,パソコンでの学習,学習内容の確認という手順で進めた。生徒のアンケートでの反応を拾ってみると,『いろいろなことを絵で表わしたり,かんたんなことからやっていくのでわかりやすいしおもしろかった。』など,強い関心を示していた。また,ふだんの授業と比べて『わからないところは,何度でもやり直せるので,とてもわかりやすかった。』『自分のペースで学習を進められるのでよくわかった。』 という答えが多かった。
 使いかたでは,初めてふれる女子生徒も『キーがたくさんあってとまどったが.すぐに慣れ.特に使いづらいところはなかった。』と答えているので,全生徒を通じて難しいとは感じていないように受けとめた。

7.考察
 今回の実践から,出てきた問題点を考察してみる。
(1)学習の個別化を図るために,1ステップずつ自分のペースで進められるように意図したプログラム作成に心がけたが,実践後における生徒の反応をみると.学習の個別化や.到達状況からみて,いちおう成功したように考えられる。ただ.反省として残ることは,個人ごとの学習のペースが異なるため.遅れている生徒には.学習全体を通じて,あまりにもゆとりのない状況が認められた。この点については,指導過程で.心のゆとりを持たせるような配慮を行うなど,今後の研究が必要である。
(2)割り算のしくみ→余りがゼロ→約数,と一連の流れを示すパターンは,基礎的な事項を理解させるには有効であったが,思考力を養うための発展的内容を,更に準備することについて今後検討する必要がある。
(3)時間は,50分授業を予定していたが,学習到達度の低い生徒は1コース柊わるのに30分程超過した。今後は,学習する課題,指導する内容を精選したり.指導のねらいをより明確にするなどしてプログラムの作成に心がける必要がある。

8.まとめ
 今回の研究では,1.自分のペースで学習を進めさせることができる。(学習の個別化)2.基礎的事項を指導するのに,1ステップずつ詳しく説明してやれば.理解が深められる。3.同じ例題を繰り返して見せることができるので,納得するまで考えさせることができるなどの効果が得られた。
 なお,この他にも,シミュレーション型.チュートリアル型,問題解決型など,さまざまな利用のしかたが考えられるので,今後の研究課題としたい。

 <参考文献>
 ・小学校指導書 算数編  文部省
 ・中学校指導書 数学編  文部省
 ・改訂 新しい算数    東京書籍
 ・改訂 新しい数学    東京書籍
用語の解説
CAI (Computer Assisted Instruction)
 教師は生徒に教材や問題を提示し,それに対する生徒の反応を見・評価して,次の教育活動を行うが,そうした教師の活動をコンピュータに代行させるもの。つまり.学習者がコンピュータの提示するコースウェア(学習用教材として一定のまとまりをもつソフトウェア)によって学習を進める教育システムである。コースウェアの様式には.1.ドリル・演習様式,2.チュートリアル様式,3.問題解決様式,4.シミュレーション様式,5.情報検索様式,6.その他.がある。教育効果としては 1.個に応じた学習ができる.2.教授・学習の記録がとれる.3.教育課題の改善が容易である.などがあげられる。


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