福島県教育センター所報ふくしま No.78(S61/1986.10) -017/038page
集する。その実践例を基に検討を加え教育目標具現化の望ましい具体計画例を研究紀要にまとめる。
3 研究の概要
(1)教育目標具現化の現状についての考察
教育目標は,学校経営のかなめであり,学校のあらゆる教育活動を通して達成すべき「教育の指標」である。
各学校においては,教育目標に対するこの考え方がすでに一般化され,教育目標達成に向けての教師の意識も向上し,具体的な教育計画の改善・実施も,意欲的に進められるようになっている。
しかし,調査の結果,教育目標に対する教師一人一人の意識上の問題など,多くの問題が指摘されたところである。これらの教育目標具現化にかかわる諸問題を次のように整理してみた。
1 教師の意識に関して
教育目標の設定とか,見直しを図る場合には,学校の協力組織を生かした,全教師による真剣な取り組みが要求されるところであるが,現状は,それに反して,教師一人一人の主体的な参画がなされないこともあるために,教育目標に対する意識やその達成意欲がもう一歩高まらなくなっているのではないだろうか。そして,このことが教育活動のすみずみまで,教育目標の浸透しない根本的な原因になっているのではないかと思われる。
2 適切な実態の把握に関して
教育の諸計画を作成し実施する場合には,計画の内容に直接かかわる対象に対する実態の把握が欠くべからざるものであると考えられるが,教育目標に関しては,児童生徒の実態把握とか学校の実状や地域の特性が的確にとらえられていないことが原因となって,教育目標及びその具現にかかわる教育課程に学校の独自性が具体的に表われてこないのではなかろうか。
教育目標が,学校の置かれている現実から遊離した教育理念の表明にとどまっているとすれば,教育目標の形式化の一因となり,日々の教育実践の形式化やマンネリ化を招くことになるように思われる。
3 教育目標の全教育活動への具体化に関して
教育目標の達成については,各校とも力を注いでいるところであるが,よく「なぜ,教育目標が生きて働かないのだろうか」などの問いかけが聞かれる。その原因を考えてみると,教育目標が学級目標や各教科等の目標にまで構造的におろされていないためにあると思われる。
つまり,理念的,抽象的性格をもつ教育目標を教育活動全体の中で,いかに有機的な関連性をもたせていくかについての具体的.実際的な取り組みに問題があるのではないかと考えられる。
4 連続として機能する「PDSP'」に関して動態的経営観から教育課程経営を見直した場合二つの観点からおさえる必要がある。
・PDSの連続過程でとらえ直すこと
・PDSの因果関係でとらえ直すこと
前者は,教育課程を編成・計画のみの部分的・断片的なとらえ方でのみ考えず,学校経営過程の計画,実施,評価と同様に,PDSの過程としてとらえ直して考えることである。すなわち,教育課程の編成一実施一評価を連続する教育活動の過程として全体的,総合的にとらえ,学校教育の中核として位置づけて考え,編成一実施だけでなくその効果までも含め,PDSのマネージメント・サイクルに合致させて経営することである。特に,P−D−Sの各過程とP−D,D−S,S−P′の間を具体的にどうするかを教育課程の展開に即して考えることである。
後者は,時間の流れに沿って連続して展開される教育活動としての教育課程のPDSが,常に教育目標や経営方針並びに教育課程編成の基本方針などにコントロールされるという考え方でとらえ直すことである。すなわち,結果志向の考え方を重視することであり,教育課程のPDSを因果関係でとらえ直すことである。特にS−P′の過程を重視し,総合的・客観的な評価に基づく資料により,教育目標などに照らし,何が成果として実現され,何が次年度の課題なのかを明らかにして次年度の計画改善へ基本的に組み入れることである。
この二つの観点からのおさえが不十分なため,