福島県教育センター所報ふくしま No.78(S61/1986.10) -027/038page
(3)道徳教育の充実
道徳的実践力の育成を中核として
1 資料活用の工夫
道徳の時間の指導は資料で決まるといわれる。どんな資料を,どこで,どのように提示したら子どもたちの心をゆさぶり,道徳的価値をより内面化できるかを考え,実践した。
ア 資料の選択
道徳的心情を豊かにする資料とは,いかなる条件を具備するものかを押さえ,各学年毎に資料を選択した。
<心情化に適した資料>1年・4年の例
1年 ○わき出した水
○橋の上のおおかみ
○二わの小とり
○ポチごめんよ
○こわれたとんねる4年 ○お母さんの請求書
○大きな絵はがき
○スキーはおれても
○渡し場おじいさん
○拾った千円札
イ 資料の分析(略)
ウ 資料の活用
a 資料提示の工夫
○視聴覚資料としての提示例
3年 「杉の木」(親切・同情)
既製のTPシートと録音によって提示した。特に録音については,先生方で登場人物のせりふを分担して劇化風に録音したものを使った。
○資料の一部修正による提示例
2年「かぶと虫とり」(自主・自律)
本資料名は,もともと「ばったとり」であったが,子どもたちの生活体験を考慮し,資料の一部を修正して提示した。
b 資料の活用類型について
○共感資料としての活用
資料中の主人公の考え方,感じ方に子ども一人一人を共感させることによって,現在の自分の価値観に気づかせ,自覚を促す。
4年「お母さんめ請求書」(家族愛)
(1)お母さんに請求書を書いた,たかしの気持ち
(2)百円玉をみたときのたかしの気持ち
(3)0円の請求書を書いたお母さんの気持ち
(4)お母さんの請求書を見たたかしの気持ち
○たかし君は,どんな考えからお母さんに請求書を書いたと思いますか
○百円玉を見てうれしかったのは.どう思ったからだろう
○いろいろなことをしてやっているのに,0円の請求書を書いたお母さんは,どんな気持ちだったと思いますか
◎お母さんからの請求書を読んで,涙をいっぱいためたたかしは,どんな気持ちだったでしょう
○感動資料としての活用
子ども一人一人の感動を特に重視しながら,ねらいとする価値を把握させる。
2年「七つのほし」(敬けん)
(1)心に残ったことは.どんなことですか
(2)なぜ.そこが心に残ったのですか
(3)みんなの意見で.にていることはどんなことですか
(4)木のひしゃくが銀から金に.そして水がダイヤモンドになり,星になったのはどんな心があったからでしょう○女の子や母親の優しい行為に気づかせる
○自分を犠牲にし.他へのやさしさ.思いやりの心が共通していることに気づかせる
○女の子や母親の優しい行為がもたらしたものであることに気づかせる
2 指導過程の工夫
従来の形式的で固定化した指導から,子どもたちの心情に強く訴え,深い感銘を与えるような授業が展開されるために,指導過程の各段階において,発問のし方,多様な学習形態,価値の一般化を深める手立てなどを工夫した。
ア 基本過程
段階 過程 指 導 の 観 点 導入 気づく <問題の意識化>
○ねらいとする価値にかかわる生活経験(情緒的経験)を発表させ.ねらいへの方向づけをする展開 考える <価値の追求>
○資料を読ませ.問題を明らかにとらえさせるとともに.初発の感想をもたせたり.自分の生活問題との共通性に気づかせる
○問題となる行為やその考えを追求させる
○中心場面において.登場人物の心情を洞察し.その状況について発表させる
○登場人物の心の底に流れるものを感得させる
広げる <価値の一般化>
○資料を離れ.場や条件を変えて価値を確かめることにより.子どもの道徳的価値に対する考え方.感じ方を広げる
終末 高める <意欲づけ>
○自分の生活に即して考えさせ.励ましにより,やろうとする意欲を高めさせる