福島県教育センター所報ふくしま No.78(S61/1986.10) -033/038page
「学ぶ」対象になるように,本時では正方形の面積を求める問題を教材としてとりあげた。そしてこの問題について観点を次々に変更して考察させながら,発見的にしかも具体的に「三平方の定理」がとらえられるようにした。
2 教師のはたらきかけ
本時の授業内容は,「知識・理解」の面に重点がおかれがちだが,発見的にとらえさせたいとの意図から,生徒の多様な考えを呼び起こすように配慮した。課題設定では,特殊から一般化を図るアイディアとしての文字の使用,また,1つの問題を別の観点からみさせることによって,「新しい関係の発見へ」等がそれである。
本時の実践では,OHPの活用や作図をとり入れたこと,また,正方形の面積を求める課題でもあったということで,「とっつきやすさ」を感じさせることができた。ただ,定理としてまとめるまでの展開過程を余りにも体系立てたことが,「おもしろさ」に欠ける原因をつくってしまったようだ。「三平方の定理」とて,その生成の過程は紆余曲折にみちた非体系的なものだったはずである。そのことを考えれば,一見無計画な活動の中から一貫性,必然性が見い出せるような授業こそ求めていかなければならないと思う。一方,1つの事柄を観点の変更によってながめさせるはたらきかけでは,生徒たちは生き生きとした活動を示していた。特に,直角をはさむ2辺によって,斜辺上の正方形の面積が決まることの発見,そして図形と数式の両面から統合がはかられた「三平方の定理」は,生徒にとって「学び」の対象になりえたと考えている。
5 おわりに
日常の授業に対する迷いが大きくなり,原点に戻って考え直してみたいと思った。そのために,「研究」の名に値しないレポートになってしまったことをおわびしたい。
授業の実践では,もっと数学的な観点からの内容研究,内容分析を深めていくことが必要である。しかし,同時に,生徒たちに「教える」ことの根源も忘れてはいけないと思うのである。大上段にふりかぶったものの,論点が定まるほどに考えが,につまっていたわけではなかった。恥ずかしさを覚えつつ,今後の一層の精進をしていきたいと思う。
<参考文献>
・学習と環境 小学館
・教育の原理2 東大出版会
・「ずれ」による創造 黎明書房
・教材研究のすすめ 明治図書
・ピタゴラスの定理 東海大出版会