福島県教育センター所報ふくしま No.79(S61/1986.12) -002/038page
中・高等学校教材研究 被服領域における実験的教材の工夫と活用
−見る・確かめる・生活に生かす−科学技術教育部 大 平 晴 美
はじめに
実践的・体験的学習を通して学ぶ家庭科では,基礎的知識・技術の定着を図るために実験・実習は欠かせないものである。
被服領域においては,製作実習を中心として衣生活の知識・技術の習得が図られるよう指導要領にも示されている。しかし,この領域の中の被服材料・被服管理では,それらの内容の特質から,知識を深める理論的な学習に偏り,生徒の関心も低くなりがちである。
そこで,この理論的分野に,興味と関心をもたせ,自ら学習する意欲を喚起させるとともに,実践的確かめとして実験を導入した授業が展開できるなら,基礎的知識の理解もより深まり,発展性のある学習成果が期待できるものと思われる。このことから,次のような実験を通して教材の工夫を試みた。以下その内容について述べてみたい。
1布の成り立ちを学ぶ教材・教具
この教材は身の囲りの被服材料(繊維・糸・布)を知るとともに,布のできる過程を理解させ,製作を通して織物の基礎的知識と技能の習得ができる。
(1)糸・布を観察し分解する。(ルーペ等)
(2)織物の組織を調べる。
<材料>色紙・はさみ・のり
<方法>@ 色紙(濃色)をたんざくに切り番号をつける。これを,たて糸とする
= 平織の場合 =
○よこ糸を奇数番号のたて糸の下に入れ上方に詰める。次に偶数番号の下に入れて上方に詰める。これのくり返し。(写真ア)
= 斜文織の場合 =
○写真イのようによこ糸をA(1・4・7)の下に入れる。次はB(2・5・8)の下に,次はC(3・6)の下に入れる。これのくり返し。A→B→Cだと右上がり ,A−C→Bだと右下がり の斜め方向の線ができる。
= 朱子織の場合 =
○写真ウのようにA(1・6)→B(3・8)→C(5)→D(2・7)→E(4)の順によこ糸を入れる。これのくり返し。
平織(写真ア)斜文織(写真イ)朱子織(写真ウ)
{3)織る‥・(応用)作品づくり〔しおり,コースターなど〕
材料 厚紙又は空箱(厚手),はさみ又はカッター,毛糸,毛糸針
方法 1 厚紙に深さ1cm,間隔0.5cmの切り込みを入れる。
2 毛糸をきざみの間にひっかけて,たて糸を張る。
3 よこ糸をたて糸の間に交互に通す。よこ糸をつめながらくり返す。
※よこ糸を引っぱりすぎると真中が縮むので注意
4 端までいったら厚紙からはずして,フリジング等で飾りつける。