福島県教育センター所報ふくしま No.79(S61/1986.12) -005/038page
(3)結果<出き上がり状態>
石けん |
形状 |
臭い |
重量 |
※ヤシ油石けん |
乳白色の小石状 |
芳香臭(石けん臭) |
9.6g |
廃油石けん |
エステル化a |
淡黄色のソボロ状 |
やや廃油の臭い |
11.5g |
ケン化b |
淡黄色のペースト状 |
aより強い臭い |
124g |
ケン化c |
乳白色のペースト状 |
aと同じ |
|
※市販石けんは(ヤシ油7,牛脂3)の原料である。
<洗浄力など>
|
※洗浄カ |
起泡カ |
風合 |
PH |
1回 |
3回 |
5回 |
ヤシ油石けん |
◎ |
◎ |
○ |
△ |
○ |
9 |
廃油 |
エステル化 |
○ |
△ |
× |
○ |
○ |
9 |
ケン化b |
○ |
○ |
× |
◎ |
○ |
9 |
〃 c |
○ |
○ |
△ |
○ |
○ |
8〜9 |
市販 |
合成洗剤 |
◎ |
◎ |
○ |
◎ |
△ |
10 |
粉石けん |
◎ |
◎ |
○ |
◎ |
○ |
10 |
◎優 ○良 △可 ×不可
※洗浄力試験‥‥‥顔垢布10cmx10cm綿メリヤス使用・試料が容易に出来る
洗濯時間10分 すすぎ3分 脱水30秒 浴比1:30 温度30〜40℃,洗剤濃度 0.13%…家庭用洗濯機使用
○廃油石けんは,やや異臭(油臭さ)がある。短時間で反応させたものa,bは淡黄色であるが長時間反応させたものcは乳白色に変化した。
異臭・色
の衣類への移遷は5回くり返し洗濯においては影響はみられなかった。
○洗浄力は,1回目は大差ないが,洗濯のくり返し5回目においては廃油石けんの洗浄力の低下が見られた。これは洗浄のくり返しでCa石けんが蓄積し,汚れの付着が増えたためと思われる。
○廃油石けんは起泡力は市販洗剤より劣るが泡切れが非常に良い。
○風合は合成洗剤に比べて石けんが全般に良い。ゴワゴワ感が少ない。
○洗剤として使用する場合,ペースト状・固形・粉末と形状は各種あるが,
粉末
は溶けやすく保存もしやすく,市販洗剤と同濃度(0.13%)で使用できるので良い。ペースト状は,水分率の換算が必要(約1割増しの分量で使用)
○台所用としても使用出来る。(洗浄力は十分である。)手も荒れない。(グリセリンの効果)
(4)まとめ
○ヤシ油石けんは教師実験で行い,廃油石けんと比較検討させると,その違いがわかる。
○日常使用するには,多量に出来て,比較的酸化が少なく,洗浄力もあるcが適している。
○廃油から石けんが出来るという 「驚き」「感動」が洗濯学習への動機づけとなり,また洗浄の原理を理解する方法としても効果的であると思われる。
○衣生活を科学的に見る目が養われ,実践,生活化へと発展させることができる。
○石けんと合成洗剤の違いが実践をとおして自然に体験させることができる。
○調理実習で出た廃油を利用し,調理室での台所用洗剤,そしてふきん洗濯用にと活用できれば何よりである。また省資原,環境問題等 消責者問題として取り組む糸口にもなる。
おわりに
理論的な分野においては,ややもすると教科書中心の座学になりやすいが,生徒の関心と意欲を引き出すためには,教材の提示の仕方が大切である。そのためには,創意と工夫を生かした教材の開発は欠かせないものであると思う。ここでは実験の導入による教材の工夫を試みたが,いずれも手軽に取り組め,生徒の自主性・創造性を養う上で効果があると考える。このような試みが指導の一助となれば幸いである。
<参考文献>
・洗浄と生活 財団法人科学技術教育協会編
・小・中学校でできる被服材料実験 日下部信幸著
・技・家の科学的な指導 村田昭治編
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