福島県教育センター所報ふくしま No.79(S61/1986.12) -007/038page

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中に表れるものである。
 道徳の時間で期待することは,児童生徒自身が今まで持っていた自己の価値観に気づき,さらによりよい価値観に変容させることである。(行動の変容を期待するのは学級指導等特別活動)誰からも命令・指示されることなく,単なる習慣からでもなく自然に人間としてよりよい行動がとれる“心のきっかけ”を作るのが道徳の時間であるといわれている。
 難しいことではあるが,われわれは一人ひとりの児童生徒がそれぞれもっている価値観を事前に把握しておき,どのように変容することを期待するのかを明確にしておかなければならない。
 (2)資料の用い方をどうすべきか
 資料に関する主な問題点は,以下のようなものであった。
 「選定の仕方,資料分析の仕方,中心価値と関連価値の関係,読み物資料の活用の仕方,提示の仕方.主発問と補助発問,補助資料の活用」
 資料としては読み物資料が多く使われ,副読本と文部省の指導資料がほとんどのようである。以下,読み物資料を中心に考えていきたい。
  1 資料の選定
 副読本は,出版会社や年度によって内容に違いがあることから「どの資料を使ったらいいのか」「学級の児童生徒の実態にあっていない」「項在の生活状況からかけ離れている」「もっとよい資料はないか」等の資料選定の悩みも聞かれる。この点については,学校,学年の年間指導計画をよりどころとするのが妥当といえる。前任者が立てた計画を活用することから始め,検討を加えるようにしたい。その計画に位置づけられた資料についてはしばしば不満を感じることもあるが,まずその資料のもっているプラス面を生かすように工夫したいものである。
  2 資料の分析 資料分析まで入っている年間指導計画の出来ている学校では,自分の担当する児童生徒の実態に合うよう見直していくことが出来る。そうでない場合には,資料分析から始めなくてはならないが学校現場の忙しい日常では,研究授業や公開授業などの機会がないとなかなかできない現状である。
しかし,時間がないとはいえ教師としては最低限事前に少なくとも数回は読み,その資料に精通しておかなければならない。児童生徒に気づかせたいことは何か,中心価値を資料からどのように理解させるか,関連価値はどの程度にするか等の悩みの解決は資料を教師自身が主体的に受け止めておかなければ不可能であると思う。
  3 資料提示・補助資料作成
 資料から児童生徒に気づかせたい道徳性を教師自身が把握した後,資料を児童生徒にどのように提示するかも考えなければならない。(道徳の時間の以前に配布して読ませておくか,時間の中で配布するか,録音テープを使うか,さし絵はどうするか等々)小学校低学年であれば,教師による絵話が有効な場合もあるだろうし,補助資料の作成も必要不可欠になる。小学校高学年や中学生であっても,読み取りの能力差を考えれば教師による範読の方が望ましいし,バックミュージックの入った録音テープなども欲しくなる。市販のものがある学校や前任者が作成したものがきちんと保管されてある学校は幸せであるが.そうでない場合は,作成しなければならない。それには学年の教師全員が分担して当たりたい。ある小学校では週に一度の学年打合せの時間を利用して道徳の補助資料を作成している学年の事例があった。分担してやれば短時間でもでき,活用する時間をずらすことによりどの学級も使うことができる。毎週いつでも出来るというわけにはいかないが,極力その時間を確保するように努力しているという。
 中学校では時間をずらすことは難しいので学級分作らなくてはならず,放課後には部活動の指導などで集まれないというハンディがある。また小規模校では単学年単学級や複式という現実がある。
 その解決のため学年の道徳担当者(係り)を中心として空き時間の活用を図ったり.小規模校では学校の現職教育に組み入れる等のそれぞれの学校の実態に即して資料作成の機会をつくりたい。

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