福島県教育センター所報ふくしま No.79(S61/1986.12) -013/038page
T 今後,どうなればいいと思う?(8)
C いじめがなくなればいいけど,無理だと思います。それから.学校に行ってもあいつらのことは許せないと思うし…‥・。
T それじゃ,現状のままでということ?
C それもいやだから…‥‥‥。8.フィード・フォワード(feed forward)
ふり返る(feed back)こととは逆に,将来について考えることです。このことによって,現状を打破するためにどうしたらよいかという建設的,生産的な考え方が要求されます。また,クライエントが自ら問題を解決しようとする意欲を刺激することにもなります。T どうしたらいいか考えるために.またここへ来てみたらと思うんだけど,どう?(9)
C そうします。
T 学校に行けるようになるまでは大変だと思うけど?
C でも,がんばります。
T じゃ,今度は○月○日の○時でいいかな?
C はい。
T じゃ,待ってるよ。
− 面接終了 −9.コントラクト(contract)
クライエントと今後の面接について「契約」することです。これも,クライエント自身の解決意欲の喚起につながります。
教育相談に必要な心理療法の理論
最後に,教育相談に必要な主な心理療法の理論について紹介するとともに,これらに基づく教育相談のあり方についてまとめました。
<精神分析理論> フロイドが提唱
○精神分析療法の基礎理論
○幼少期の体験が性格を形成し,無意識があらゆる行動の原動力である。
○この無意識下に抑圧されている幼少期体験を想起させ,遅まきながらその体験を克服させる(無意識の意識化)のが,精神分析療法の骨子である。
<自己理論> ロジャーズが提唱
○来談者中心療法の基礎理論
○人間は,成長,自立及び独立への傾向など「自己実現」への傾向をもつ。(人間にはよくなる力が内在している。)
○目で見える世界の受け取り方が行動の源泉で.自分に対する受け取り方(自己概念)が行動を変える。
○事実に即した自己概念を持たせること(自己不一致から自己一致させる)が,来談者中心療法の面接である。
<行動療法的理論> アイゼンクなどが提唱
○行動療法の基礎理論
○問題行動は誤った学習の結果か正しい行動のパターンを学習しなかったかのいずれかである。
○正しい学習のし方を学ばせるのが行動療法である。
以上,主な心理療法の理論について簡単にふれましたが,人間観や人間の行動のとらえ方,理論に基づく心理療法の骨子がおわかりいただけたでしょうか。私達は,これらの諸理論の良さを生かしながら面接に当たっていますが,大事なことは,カウンセリングは人間関係であるということです。ですから,児童・生徒が問題行動を起こす以前からの, 先生と児童・生徒との普段の良い人間関係こそが教育相談である と言えるのではないかと考えています。
<参考文献> 「カウンセリングの理論」「カウンセリングの技法」 共に国分康孝著