福島県教育センター所報ふくしま No.79(S61/1986.12) -014/038page

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教育工学

教育工学へのすすめ

学校経営部  林     功



1. はじめに
 日常の授業を行ううえで,教育工学といわれてもあまり身近かに感じないのはなぜであろうか。
 それは,機械を使っての授業とか,視聴覚教育と同じと思われているからではないだろうか。
 このことは,当教育センターで行う教育工学講座の際アンケート調査の結果をみても,うかがい知れる。教育工学という手法が誕生して20年ほど経過したが,視聴覚教育やプログラム学習という程度にしか考えていない場合が多く見受けられる。たしかにこの間,二通りの定義づけがなされていたのである。その一つは,教育機器を利用するということ,二つめは,行動科学の教育への適用ということであった。しかし,これらのうち特にとり上げ易かったのが放送,視聴覚機器,ティーチングマシン等の利用,そして,教材の学習プログラム化だったからである。

2.教育工学とその現状
 教育工学とはどのような手法なのだろうか。
 それは,教育に関係した操作可能なすべての諸要因,すなわち教育目標や教授目標と教育内容.教材・教具,教育機器などの教育媒体。それに加え教育方法と教授方法.教育環境,児童生徒の行動及び集団,それに教師の行動などの相互関係を制御し,教育効果を最大ならしめることを工学的実証的に研究実践する教育活動なのである。
 また.学校や学級の管理,経営や教科指導,生活指導などの教授活動,および時間割作成,出欠席,成績等の教務のような実践領域において,工業技術,情報科学,理学,行動科学,人間工学の成果を縦横に利用して.教育の効率化をはかろうとする手法なのであり,直面する研究分野でもあある。
 すなわち,教育工学についての研究は,教育目標(目的)をより効果的に達成するために,教育課程をシステム的にとらえて構成要素の最適な組み合わせを追求し,教育の効果をあげる具体策を提案し,それらに役立つ技能,道具 仕組みを開発,実践し,改善していく研究である。
 この分野も,1970年代頃からシステム工学や情報科学などの影響を受けて次第に様子は変わってきた。単なる視聴覚教育やプログラム学習では,その内容をまとめきれなくなり,外国では全米教育協会(NEA)や,英国のプログラム学習と教育工学会(APLET)が,その組織替えをするほどまでになったのである。
 当教育センター学校経営部教育研究係では,小学校教育工学講座(1次)及び(共通)。中学校教育工学講座(1次)及び(共通)。高等学校視聴覚教育講座(共通)を年間を通し各1講座ずつ開講している。来所される先生方の年齢や経験等がまちまちなので,事前にアンケート調査用紙を配布しておき,先生方の経験や機器の利用状況,学校の現状などを把握し,研修に来所される先生方1人1人の実情に合った講義内容に,また,講座が有意義に受講できるように配慮している。
 内容的には,教育現場において,児童生徒1人1人を生かした学習指導のために自己教育力育成の手だてとして,さらに「わかる授業」展開への手段や方法として研修できるよう配慮している。また科学技術の進歩に伴う技術革新の時代にあって教育機器の開発が進み,個人差に応じた学習指導展開のために機器の利用が盛んになってきた状況の対応についても考える内容としている。
 文部省刊「学校における視聴覚教材の利用」で

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