福島県教育センター所報ふくしま No.79(S61/1986.12) -033/038page

[検索] [目次] [PDF] [前] [次]

○ ダンボールで作った電車にはいり,音楽に合わせて歩く。文字の駅でひらがな.漢字カードなどの課題を読ませる。教師と子どもが輪になって学習にとりくんだために逃げだす子どももいなかった。
 K男が,A子に教えてやる場面も見られた。
○ 多様な学習活動をとり入れた。
  ごっこ遊びをとおして歌う,おどる,円陣に座って話を聞く,整列する,話す,読むなどの多様な学習をとり入れることにより,興味をもって,どの子どももあきずに参加することができた。
○ かかわりがもてた。
 遊び時間に,K男が中心になってA・Bの子どもに呼びかけて電車ごっこをする姿も見 られた。一連の電車に乗り,子ども同士のかかわりも見られ,それぞれの能力に合った活動ができる題材であった。

4 考察と今後の課題
○ 教師自身の経験的理解が深まり,心にゆとりを持って指導するようになった。
○ 親の気持ちになって
  子どもを入学させるまでに,つらく悲しい思いをしたことを,障害児を持つ親たちは,経験している。親の気持ちを理解できるようになった。
○ 語り合えるようになったK男
  学級内で,パニックをおこすこともほとんどなくなり喜々とした生活を送れるようになった。
  教師や友だちの話を静かに聞いて行動がとれるようになった。
 集団の中で,みんなといっしょに遊んだり,小さい子のめんどうを見てやれるようになった。
 はじめは,教師対K男であったが,次第に,子ども同士のつながりをもつようになった。
 今年入学してきた自閉症児が泣くと,「泣いてはダメ。」と言えるようになった。1年生の子どもといっしょに手をつないで歩かれるようになった。

○ 子どもが喜びの表情が,変わっていくのを見て,親の態度が変わっていくことは事実である。
○ 試行錯誤をしながら,日々を送るのが精一杯で,特別の指導をしたという実感をもてなかったが,K男の言葉も多くなり.感情も豊かになりクラスの一員としてすごせたのは,子どもひとりひとりの,K男自身の,そして母親の努力だったと思う。私は,この子たちから学ぶべきものが多かったように思う。
 K男にあてはまる適切な指導法は,数多くある参考図書をひもといても,なかなか見あたらない。
 実践をとおし,経験の中からうみだした対応策で指導にあたらざるを得ないのが現状である。
 パニックをおこした時の対応については,その場その場の状況判断でやるしか方法はない。
 教師の無視や,ことばかけも,その都度変えていかなければならず,むずかしさを感じる。
 しかし,K男も今では大きく成長し集団の中で活動できるように育ってくれた。
 ふりかえってみると,ひとことで適切な指導法は表現できない。一日一日の記録こそがこの子の指導法になっているのでないかと,考えている。

○ 今までの貴重な体験をいかして実践をとおして課題の追求に気長に,根気づよく,子どもと共に学んでいきたいと考えている。
○ さいごに,私の心を支えてくれたものに,校長先生はじめ諸先生方の協力は,もちろんのこと障害児をもつ保護者の方々の支えによるところが,大きかったと思う。

[検索] [目次] [PDF] [前] [次]

掲載情報の著作権は情報提供者及び福島県教育センターに帰属します。