福島県教育センター所報ふくしま No.80(S62/1987.2) -006/038page

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小・中学校教材研究(理科)

植物の水分移動の実験と指導

−身近な素材の活用と簡易蒸散計による蒸散量の測定−

科学技術教育部  小 山 泰 雄


1 はじめに
 植物は生長に不可欠である多量の水分を根から吸収し,蒸散作用によって水蒸気のかたちで大気中に放出している。その水分は植物体内における栄養分や養分の運搬の媒体としても重要な役割を果たしている。このような水分がどのように運搬され排泄されているかを調べることは植物の生理作用を理解する上で大切なことである。
 小学校指導書では5学年「生物とその環境」の単元において,植物体の中に入った水分などの行方を調べ,それらが行きわたる仕組みを理解させることになっている。中学校においては2学年「生物のからだと細胞」の単元で,水分の移動と蒸散作用の関係について学習する。しかしこれらの単元での観察・実験は長時間を要することや実験上の操作にむずかしさがある。
 そこで,身近な植物教材を用いて簡単にできる水分移動の実験とフィルムケースを用いた簡易蒸散計による蒸散量の測定とその活用法について紹介する。

2 身近な植物教材を用いた水分移動の実験
(1) ネギ,ホウセンカ,ふ入りのオリヅルランの水分移動
 1 準 備
  フィルムケース,支持台,輪ゴム(No.8),ストップウォッチ.油性ペン,定木,食紅(または赤インク),カミソリの刃,顕微鏡及び観察用具.観察材料(ネギ,ホウセンカ,中心部ふ入りのオリヅルラン)
 2 方 法
 ア ネギ1本.オリヅルランの葉,真っすぐなホウセンカの茎(30〜40cm)を2〜3本各班で用意し,その根を水中で切断する。
 イ ホウセンカの茎の部分,ネギの白い部分をカミソリの刃で薄く縦断する。オリヅルランについては,葉柄の基部から採取したままの葉を使用する。
 ウ 食紅を入れた色水をフィルムケースの中に入れ,その中にそれぞれの植物を浸し支持台に固定する。
オリヅルラン.ホウセンカ.ネギの水分上昇

 エ 1分間ごとに色水の上昇した位置に油性ペンで印をつけ先端まで達したら取り出し,印間を定木で測るようにする。

 オ 同種につき2〜3回測定しその平均値を求めてその植物の水分上昇の速さとする。

 カ 横軸に速さ,たて軸に水分上昇の高さを取りグラフ化する。
 キ 色水の上昇した通路は維管束のうち,道管部であるから測定終了後適当な部分で横断切片をつくり道管部を顕微鏡で詳しく観察しどの部分が着色しているかを調べる。
 ク ホウセンカについては,茎の縦断面の切片もつくり顕微鏡で観察する。

3 結果と考察
  オリヅルラン,ネギ,ホウセンカについての単位時間(1分間)ごとの水分上昇と葉や茎の様子は次のようになった。

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