福島県教育センター所報ふくしま No.80(S62/1987.2) -009/038page

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(3)結果と考察
  1 植物の種類による蒸散量の比較
植物の種類による蒸散量の比較

 サツマイモやキウリ,ナスについては,明るさ800lux,室温17℃,湿度58%では,葉の100cu当たりの蒸散量に大きな差が見られないが,オナモミの場合は非常に大きいことがわかった。1分間に3.2cmの滅少があるとすれば,32mm×1mm×1mm×π≒100立方mmの水分が100cu当たり蒸散していることになる。
 オナモミは道ばたに自生し手軽に手に入り蒸散量を観察するのによい材料と思われる。

 2 ツバキの葉における日なたと日かげでの蒸散量の比較
ツバキの葉の日なたと日かげの蒸散量

 日なたと日かげでの蒸散量の違いを室内の直射日光の当たる窓ぎわと当たらない室内とで調べるとはっきりと区別できる。葉の裏にワセリンをぬった場合,日かげではほとんど蒸散が行われていないことがわかる。ツバキの場合は葉の裏面に気孔が多く表面には見れない。葉の表裏の蒸散量の違いや明るさによる蒸散量の違いを比較することができる。この実験であれば1時間の授業の中で十分蒸散の働きを理解させることができる。

 3 植物の種類による気孔数の比較
   <気孔の数と大きさ>

植物名

0.2×0.2mu内

の気孔数

孔辺細胞の大きさ

たて(μ)×よこ(μ)

おもて

う ら

サツマイモ

オナモミ

サ ク ラ

ク   ワ

ツ バ キ

3

4

0

0

0

7

9

13

13

9

57×52

44×26

22×18

22×9

26×18

気孔数については各植物の表裏面表皮をセメダイン法ではぎ,目盛つきスライドガラスを用いて0.2×0.2mmの方形区内にある気孔を5個所調べ平均値を求めたものである。クワ,サクラ,ツバキについては表面には気孔が観察できなかった。サツマイモやオナモミの気孔は葉の両面にあり形も大きく非常に観察し易い材料である。

4 おわりに
 水分の移動の観察材料として,ネギやふ入りのオリヅルランは視覚的にしかも短時間に観察できる点よい方法である。フィルムケースを用いた簡易蒸散計の活用についても,1時間の授業の中で実験から考察まで展開できることは長時間を要した蒸散の実験をやりやすいものにしてくれると考える。材料としてのオナモミの活用や工作用接着剤を用いての気孔の観察も是非各学校で試みてほしいものである。

<参考文献>
・生物教材の研究(1986)
      全国理科教育センター研究協議会編
・実験植物生理生態学実習
      田口亮平,田崎忠良共著(養賢堂)
・小学校指導書 理科編 文部省
・中学校指導書 理科編 文部省

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