福島県教育センター所報ふくしま No.80(S62/1987.2) -018/038page

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調査した結果が<表4>である。この結果からみると生徒は自分の学習で不足していたところをよくとらえていると思われる。また,小学校,中学校の理科の学習について調査してみると実験の問題解決のための推論(予想)をして学習を進めていたことが多いことも分った。
<表4> 探究の過程において重要と考えている観点
表4 探究の過程において重要と考えている観点
(3)原 因
−生徒側−
  ○ 自分から実験の問題解決のための推論をすることが大変少ない。
  ○ 思考を要する実験になると,意欲をなくすことがある。
  ○ 初めてする実験なので操作が思うように進まず時間ばかりかかる。
  ○ 実験結果を覚えておけばテストには十分であると考えているものが多い。
一教師側一
  ○ 実験についての事前の指導で,課題把握を十分にさせ,推論することの大切さ・実験計画の適切さ・実験操作の正確さと考察の重要性を十分に指導していなかった。
  ○ 化学の基礎概念の指導にとらわれすぎて物質ばなれの指導になっていた。
  ○ 講義中心の授業になっていた。
  ○ 実験内容を精選して与え,考えながら進める時間が少なかった。
 アンケートの結果から,生徒の実験に対する関心は高く,実験を通した学習の中で,生徒自身が自分達の学習の不十分な観点をよくとらえていると思われるので,生徒の意識を高め,より効果の上がる観察・実験の指導を進めていきたい。

 そこで,実験を進めるにあたり,基本的な内容についてもう一度確認することから指導することが必要であると考えた。<表5>
     <表5>実験の進め方
○どんな目的の実験をするのかを理解し
○どのような方法でやればよいのかを考え (推論)
○結果がどのようになるのかを考え (推論)
○操作を正しく進め
○正確な実験結果を得て
○結果からどのようなことがいえるかをまとめる。

 実験の指導を適して推論(予想)することを繰り返し,指導していけば,生徒の実験に対する関心の高まりと相まって観察・実験による学習の効果があると考え,次のような仮説を設定した。

2.仮説
化学の観察・実験において,問題解決のための推論に重点をおいた指導を繰り返していけば,化学的な物質の見方が理解できるようになり,学習の効果を上げることができるであろう。

一仮説のための理論一
  自然を観察し,実験して法則化する方法を一般に帰納法という。この方法論はフランシス・ベーコンによって確立され,レオナルド・ダ・ピンチによっても,自然研究のよりどころとされていたのである。ダ・ピンチは,「自然そのものは理論に始まって実験に終るにしろ,我々は反対の道をたどらなければならない。即ち,実験から始まってそれをもって理論を吟味することだ。」といっている。

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