福島県教育センター所報ふくしま No.80(S62/1987.2) -022/038page
研究実践の紹介 土に親しみ,助け合って働くよろこびを味わう勤労生産学習
いわき市立大野第一小学校
1 はじめに
本校は,昭和59・60年度の2年間福島県教育委員会並びにいわき市教育委員会からの推薦をうけて,文部省研究指定校になった。
本校は,いわき市の北東部,常磐線四倉駅より約5km離れた農村地域で,豊かな自然に恵まれた環境にある。
児童は,素朴で従順な反面,農業の機械化が進んだことから,子どもたち自身が生活の中における勤労体験が少なく,働く態度にかかわる勤労観の形成化も未分化の状態であり,土に親しむ機会が少なかった。
これらの児童の姿から共通認識をもって,本校なりの研究を推進してきたが,教室の中では体験できない自然との一体感を味わい.生命現象の神秘さを肌で直接感じ,更に縦割りグループによる上級生と下級生の信頼関係,下級生や友だちに対する思いやりが深まるなどのささやかな研究の成果を得ると共に今後の課題も残された。今年度は,残された課題に向けて継続的な研究に取り組んでいる。
2 主題設定の理由
(1)地域及び社会の実態から
本校は,稲作を中心とする農村地域であるが,農業の機械化や省力化が進み,近郊の工場などに働きに通う親が多くなり,兼業農家が77%である。専業農家は,4戸で3.8%である。
家庭や学校においても,土に親しむ機会が少なくなり.児童が汗して働くという場がなくなってきたが,2年間の勤労生産学習の体験を通して意識や行動の変容が生活の上に表れてきており,この学習の意図するねらいが理解されてきている。更に,この意識の高まりを継続的に持続させて活動を進め,働くことの体験を積み重ねることによって,地域への浸透を更に効果的にしたい。
(2)本校の教育目標の具現から
本校の教育目標は
・考える子ども・じょうぶな子ども・助け合う子どもの3つである。この3つの子どもの姿を目標として,6つの努力目標がある。この中で,5 豊かな心で思いやりのある子ども,6 親切に助け合って仕事をする子どもに関連した思いやりや助け合いなどの心の面と体を動かして仕事をすることに深く関係し.その具現を図るものである。
(3)子どもの実態から
恵まれた自然環境にあっても.土に親しむ機会が少なく,土や植物にふれるという経験も少なかったが,この2年間の実践において土に親しむ態度,自然に触れる態度,人とのふれ合いの態度,汗して働く姿などから望ましい変容が芽生えてきているとき,より主体的な実践活動ができるように配慮し,定着をはからなければならない。それによって,友だちに対する思いやりやお互いに助け合って仕事を進めていく大切さが農作物栽培以外の生活面でもより一層深められ,培われていかなければならない。
3 研究の方針
(1)研究を進めるにあたっては,全職員の共通理解を深めながら研究をする。
(2)本校の教育目標の具現であることを基本にし,「人間性豊かな児童の育成」を最終のねらいにし,実践活動を通して体験させることを重点にする。
(3)農作物の栽培を中心とした勤労生産学習の効果的な実践のあり方を継続研究し深める。
(4)主として創意を生かした教育活動の内容とし,特別活動の領域との関連も考えて進める。
(5)農園(畑),水田,学校園,学級園の4つの場を対象とするが,農園を主に実践の場とする。