福島県教育センター所報ふくしま No.81(S62/1987.6) -010/038page

[検索] [目次] [PDF] [前] [次]

<所員個人研究>−中・高等学校学習指導・保健体育−

陸上競技(障害走)の指導

学習指導部 吉田 政勝

1.はじめに

 保健体育科の体育分野における学習指導の中で陸上競技はあらゆる種目の基本的要素を含んでいるということから、実際の授業に個人的スポーツの代表的な種目として取り上げられているケースが多い。しかし、領域が広く遊戯性に乏しい種目が多いため、生徒達は興味を失いやすい傾向が強い。特に女子生徒は、小学校高学年の頃から苦手意識が強くなり、中・高校では60%〜70%が陸上競技に興味を示していない状況にある。
 思春期における女子生徒の走能力について、一般的に50m走や100m走の記録の伸びの状況は横ばいか下降する傾向がみられる。この原因としては、この時期になってくると身体を思いどおりにコントロールできなくなってくる女子生徒が増えてくるということが考えられる。また、陸上競技では自己の能力が客観的に明らかになってしまうということからくる女子生徒特有のはずかしさなども活動意欲の低下を引き起こしているようである。
 陸上競技の疾走の特性を考えてみた場合、生徒達が,授業において競走して勝ったり、自己の記録が伸びたという楽しさを味わうことができるかどうかということが大切になってくる。前にも述べたように走能力の伸びがあまり期待できないとされている状況の中で、ただ単に走る授業では生徒達は陸上競技の特性に触れるどころかますます興味・関心を失ってしまうであろう。しかしながら障害走は、多くの要素が組み合わされている種目であるので、工夫しだいでは女子生徒も興味を示すとともに特性に触れる楽しさを十分味わうことができると考えられる。
 障害走に対して興味・関心が低いとされる女子生徒も規則的に並べられたハードルをリズミカルに越えながら、思いどおりにゴールまで走り通してみたいという気持を持っているはずである。授業では、その気持を大切にしながら、陸上競技の特性に触れる楽しさを自分の力で味わうことができるようにすることが大切であると考えられる。ここでは、女子生徒が障害走に主体的に取り組むことができるようにするための指導のポイントを探ってみたい。

2.障害走の特性

(1)一般的特性
 1. 一定の距離に規則正しく設置されたハードルをリズミカルに越えながら走り通してタイムを競う競技である。
 2. ランニングとハードリングをくりかえすことにより、総合的に技能や体力を高めることができる。

(2)学習者の立場から見た特性
 1. 規則正しく並んでいるハードルをリズミカルに越えて走ることに、スリルと楽しさがある。
 2. ハードリング、ランニングとハードリングを結びつける技能を習得するのに困難がある。
 3. ハードルに対する恐怖心を克服する必要がある。

(3)指導者の立場からみた特性
 1. 障害走の全体の動きから、生徒の総合的な能力をとらえることができる。
 2. 技能面の指導において、生徒の能カやつまずきを的確に把握できる知識と眼をもつことが必要である。
 3. 学習指導が単調にならないような工夫が必要である。 

 

[検索] [目次] [PDF] [前] [次]

掲載情報の著作権は情報提供者及び福島県教育センターに帰属します。