福島県教育センター所報ふくしま No.82(S62/1987.8) -013/038page
めには、意図的に何らかの刺激を与え、ライバル意識を高める指導工夫が必要であると思われる。
(2)学習指導改善の実際
生徒の実態観察としては、基礎力の不足、予習復習の不徹底、目標に向っての意欲の欠除など、生徒側の自覚していることと一致する。教師サイドとしては、わかる授業をめざし、生徒には今やらねばならないことを自覚させ、学習意欲を喚起して自律的にやるようにしむける学習指導を第一として実践にあたらなければならないと思う。
これまでも各教科担任は、早朝豆テストや放課後の個別指導・添削指導とさまざまな工夫をこらして実践している。しかし学年主導で強力にすすめていくためには、さらに教科をこえて学年担任全体の共通理解と一致協力が必要である。
学習指導の基本は、授業内容の指導充実と家庭学習の効果的利用法にあるという共通認識のもとに、各教科担任がそれぞれ独自の立場で、課題学習を強化することにより、どの程度成績が伸びるものであるかその有効性をみることにした。
第一学期の総括評価点が全体的に悪く、成績不振者が多かった科目を重視して、それぞれの教科担任が、おちこぼれを出さないように、またわかる授業をめざして、2学期から実験的指導学級をつくり教科指導の研究をすることにした。
1.研究実践の手順
学年会 教科担任 学年会
――
(協議)― 研究課題の検討・決定 7月 ――
(実践)|― 研究主題の決定・課題学習の準備 8月 |― 実験的授業・家庭学習課題の指導実践 8〜11月 |― 実験的指導効果についての検証 11月 ――
(協議)|
|―有効性の検証報告 12月 |― 課題学習の再検討と改善
2.研究実践の内容
ア.実験的指揮グループ :国語(古典)1クラス 社会(日本史)1クラス
数学(代幾)1クラス 理科(物理)1クラス
英語(英語IIC)2クラス
全クラスがいずれかの実験クラスになるようにする。
イ.授業案の検討・授業の準備・学習課題の作成・生徒のグループや個別の指導。
3.学習指導改善のための実践と検証
2学年の各教科担任がそれぞれに右の表のような研究主題を決め、研究仮説をたてて、授業時扱び家庭学習時に課題を与えることによって,学習意欲の高揚と学力の向上を図る指導改善の方法を試みることにした。
研究主題 研究仮説 国語 古典学習の基本的な方法・態度を身につけさせる。 復習プリントにより古典学習において口語訳が学習の最終目標ではないことを知り予習の仕方、ノートの取り方、授業の受け方に改善がみられるのではないか。 数学 復習中心のプリント学習で生徒一人一人の力を定着させかつ発展させる。 学力差の開いた生徒に対応した問題を与え、提出後の指導をきめ細かくすれぱ効果があがるであろう。 英語 グループ学習を通して英作・文法の基礎力を高める指導の工夫。 生徒が学習を進める過程で、グループごとの相互評価活動を活発に行えば、生徒の学習意欲が向上し、学習達成度が高まるであろう。 日本史 質問形式の授業と小単元ごとの課題テストを通して歴史的事実を把握させる。 質問形式の授業を多くすることにより歴史的思考力と歴史学習に対する関心が高まることを期待する。 物理 復習中心のプリント課題を家庭学習として与えることにより定着を図る。 基本・中間・高度の問題と生徒がどこまでできるかをみる。課題提出後の指導をきめ細かにして効果をあげる。 ○課題学習の実施と検証
(a) 実践方法:課題学習を通して生徒がどのよに変容するかをみる。変容の比較は、第1学期の評価点を基準として2学期の中間考査を主とするが、それまで数回の形成テストを入れていく。
(b) 研究の手順:1.課題はどのクラスにも一斉に与える。 2.自主学習にまかせるクラスと課題提出を義務づけるクラスを予め決めておく。 3.成績上・中・下位者を1クラスの中で分け、さらに各レベルの抽出者(2〜3名づつ)を選び、その変容をみる。
(c) 検証の方法:比較学級と実験的指導学級をつくり、前後比較により調査をする。2学期以後中間考査までの3ヵ月間をさし当っての研究期間として、各教科とも課題学習を強化する指導過程を試みてきた。各教科のさまざまな事情もあって短期間に限定しての実践研究は一様にはいかなかったが、比較的に目にみえてあらわれてきたと思われる英語と数学の場合を代表例として、以下その結果と考察を述べてみる。